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1か月単位の変形労働時間制|正しく理解できていますか?
変形労働時間制は、働き方に合わせた柔軟な労働時間の設定が可能であり、従業員はワークライフバランスの実現、企業は残業代の削減を行うことができます。
今回は1か月単位の変形労働時間制のルールや残業時間の算定方法などについて解説します。
目次
1.変形労働時間制とは?
2.働き方改革による変形労働時間制の導入
3.1か月単位の変形労働時間制の導入手続き
4.残業時間の算定方法
5.1か月単位の変形労働制を運用する上での疑問点
6.勤労の獅子では変形労働時間制が正しく管理できます
7.まとめ
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文言の説明
・法定労働時間:労働基準法で定められた労働時間
・所定労働時間:会社が契約等で定めた労働時間
1.変形労働時間制とは?
厚生労働省が公表している「令和5年就労条件総合調査」によると変形労働時間制を導入している企業の割合は59.3%であり、多くの企業で採用されていることがわかります。
企業の規模毎では、従業員数1,000人以上の企業の77.3%が導入をしており、規模が大きな企業であるほど変形労働時間制を採用していることがわかります。
労働基準法では、1日8時間、週40時間の法定労働時間を定めています。そのため、法定労働時間を超えて所定労働時間を定めることは原則できません。
しかし、法定労働時間の例外として、変形労働時間制を導入することで法定労働時間を超えて企業は所定労働時間を設定することが可能となります。
変形労働時間制は、業務量に合わせて法定労働時間を柔軟に調整できる制度であるため、時期に応じて業務量の波が大きい業種・業界の場合は、変形労働時間制を導入することで、繁忙期の所定労働時間を長くし、閑散期は所定労働時間を短くするなど、柔軟に労働時間を定めることが可能となります。
例えば、月末月初が特に忙しい業種において、月末月初の所定労働時間を10時間に設定し、月中の所定労働時間を7時間などに設定するということが可能となります。
労働基準法では、変形労働時間制として4種類のパターンを定めています。
1.1か月単位の変形労働時間制
2.1年単位の変形労働時間制
3.1週間単位の非定型的変形労働時間制
4.フレックスタイム制
今回は1か月単位の変形労働時間制についてご紹介します。
2.働き方改革による変形労働時間制の導入
昨今は多様な働き方の実現を目指す「働き方改革」の一環として週休3日制の導入を検討する企業が増加しています。
週休3日制には、いくつかのパターンがありますが、その一つとして1日の所定労働時間を長くする一方で、全体の労働時間には変化を与えないパターンがあります。
上記のように1日の所定労働時間を長くする方法では、労働基準法上の1日8時間、週40時間の法定労働時間を超過してしまうため、法令の上限の例外である変形労働時間制を導入する必要があります。
このように働き方改革の推進により、変形労働時間制の導入を検討する企業が増えると考えられます。
3.1か月単位の変形労働時間制の導入手続き
導入する場合には、就業規則、労使協定またはその他これに準ずるものによる手続きを行う必要があります。ただし、労使協定を締結した場合には、その労使協定を管轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
就業規則、労使協定で定める内容は次の通りです。
①対象労働者の範囲
②変形期間
③変形期間の起算日
④変形期間における法定労働時間の総枠
⑤変形期間における各日・各週の労働時間
⑥有効期間(労使協定による場合のみ)
1.対象労働者の範囲
対象労働者の範囲に法令上の制限はありません。適用する範囲を全従業員、部署単位等で制限することが可能です。
しかし対象労働者の範囲は明確に定める必要があります。
2.変形期間
変形期間の長さは1か月以内の期間であれば制約はありません。例えば、4週間、2週間といった設定が可能です。
3.変形期間の起算日
暦月単位であれば月初(1日)を起算日とするのが分かりやすいですが、給与算定期間と合わせることも可能です。
例えば、給与の算定期間が16日~翌月15日であれば、16日を変形期間の起算日として、16日~翌月15日を変形期間とすることが可能です。
4.変形期間における法定労働時間の総枠
1か月単位の変形労働時間制を採用する場合には、変形期間の労働時間を平均して1週間の労働時間は法定労働時間を超えてはいけないというルールがあります。変形期間の法定労働時間は、以下の計算式で求められます。
※特例が認められる事業については1週間あたりの法定労働時間は44時間となります。
特例が認められる事業は次の事業です。
この計算式で求められた労働時間のことを「法定労働時間の総枠」といいます。
計算式をもとにして変形期間を1か月とした場合の法定労働時間の総枠は次の通りとなります。
5.変形期間における各日・各週の労働時間
変形期間における各日・各週の労働時間を定めておく必要があります。
各日の労働時間は、単に「労働時間は1日8時間とする」という定め方ではなく、始業・終業時刻も定め従業員へ周知する必要があります。
6.有効期間(労使協定による場合のみ)
労使協定によって変形労働時間制の作成を行う場合は、その協定の有効期間を定めます。
4.残業時間の算定方法
変形労働時間制では、1週間40時間、1日8時間を超えて労働させても、あらかじめ決められた所定労働時間内である限り残業時間にはなりません。
残業時間となるのは、所定労働時間が法定労働時間を超えて設定されている週または日に、その所定労働時間を超えて労働した部分について残業時間となります。所定労働時間が法定労働時間未満の週または日については、法定労働時間を超えて労働した部分が残業時間となります。
残業時間に該当するか否かは、日単位→週単位→変形期間の順番に計算を行い、合計時間数が残業時間の時間数となります。
日単位の残業時間
①1日の所定労働時間が8時間超である場合
あらかじめ定めた所定労働時間を超えた時間について残業時間となります。
例えば、1日の所定労働時間を9時間と定めている場合は、9時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
②1日の所定労働時間が8時間未満の場合
8時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
例えば、1日の所定労働時間を7時間としている場合には、8時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
週単位の残業時間
①1週の所定労働時間が40時間超である場合
あらかじめ定めた所定労働時間を超えた時間について残業時間となります。
例えば、週所定労働時間が42時間と定めている場合、42時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
②1週の所定労働時間が40時間未満の場合
週40時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
例えば、週所定労働時間が38時間と定めている場合、40時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
週の残業時間を計算する際に、日単位で発生した残業時間は除いて計算します。
例えば、週所定労働時間が38時間の週に44時間労働した場合、
44時間-40時間=4時間
その中に日単位で残業時間となる時間が2時間ある場合は、
4時間-2時間=2時間
変形期間の残業時間
変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を計算します。
日単位、週単位で発生した残業時間は除いて計算します。
例えば、変形期間を月単位として、月所定労働時間177時間の月に190時間労働した場合、
190時間-177時間=13時間
その中に日単位+週単位で残業時間となる時間が4時間ある場合は、
13時間-4時間=9時間
ここまでの手順を踏まえて残業時間の計算例をみていきましょう。
5.1か月単位の変形労働制を運用する上での疑問点
法定休日に労働した場合
法定休日に労働した場合は休日労働となるため、残業時間とは別で管理する必要があります。
法定休日は「特定の曜日」または「4週4休以上」のいずれかを設定する必要があります。
有給休暇の取得方法
有給休暇は暦日単位で付与されるため、取得する日の所定労働時間にかかわらず1日分の休暇が付与されます。
そのため所定労働時間が1日10時間の日も7時間の日も変わらず1日分として有給休暇を取得させることとなります。
時給制の場合、賃金はいずれかの方法で計算することになります。
①取得日の所定労働時間を働いた場合の賃金
②平均賃金(直近3ヶ月)
③標準報酬月額÷暦日数の金額 ※労使協定の締結が必要
例えば、①を採用した場合、1日の所定労働時間が10時間の日に有給休暇を取得した場合、10時間分の時給を支払う必要があります。
6.勤労の獅子では変形労働時間制が正しく管理できます
「勤労の獅子」では1か月単位の変形労働時間制を正しく管理することができます。
日単位、週単位、変形期間の3つの期間のチェックをシステム上で計算を行うことが可能です。
導入・サポート担当者がヒアリングを行い運用に合わせた設定を行います。
以下は勤労の獅子の勤怠管理画面です。日単位、週単位、変形期間で時間外労働の計算を行います。
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7.まとめ
1か月単位の変形労働時間制では、日単位、週単位、変形期間の3つの単位で残業時間の計算を行います。今後、制度を導入する場合は、制度を正しく理解して運用することが求められます。そして運用を開始する際は、従業員へ支払う給与にも影響を与える可能性が高いため、従業員へ制度の理解を浸透させて正しく管理を行いましょう。
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