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2024.06.11コラム

残業代は何分単位で計算するべきか?法令違反リスクと対策

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残業時間の計算方法に関して、特に「残業時間は何分単位で計算すべきか?」という疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。適正な勤怠管理を行うためには、労働基準法に基づく正確な残業時間の把握が必要です。この記事では、残業時間を何分単位で計算するのが正しいのか、法的基準や注意点について詳しく解説します。

目次

1.残業代は何分単位で計算するのが正しい?
2.残業代が発生する対象
3.残業代の請求時効と労働者・企業がとるべき対策
4.残業代を1分単位で計算しなくて良いケース
5.正しい残業計算を行うメリット
6.まとめ

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1.残業代は何分単位で計算するのが正しい?

残業代は、労働基準法第24条「全額支払いの原則」に基づいて計算されます。この法律では、1分単位での正確な勤怠管理が義務付けられています。以前は15分単位での勤怠管理が一般的でしたが、15分単位では労働者に不利益をもたらす可能性があるため、現在は1分単位での管理が求められています。

例えば、労働者が1日の勤務終了後に10分間の残業を行った場合、その10分間すべてが残業時間として計算されなければなりません。15分単位での計算では、この10分が切り捨てられたり、切り上げられたりすることがありますが、これは法律違反です。労働基準監督署は、こうした不正確な勤怠管理を厳しく取り締まっており、企業が違反した場合、是正指導や勧告を受ける可能性があります。

さらに、企業が法定の計算方法を守らない場合、労働者からの信頼を失うだけでなく、30万円以下の罰金が科されるリスクもあります。したがって、企業は正確な勤怠管理を徹底することが求められます。

2.残業代が発生する対象

残業代が発生する対象には、「法定外残業」と「法定内残業」の2種類があります。

法定外残業とは、法定労働時間を超えて働く時間のことです。労働基準法では、法定労働時間は1日8時間、1週間40時間と定められています。この時間を超えて働く場合には、通常の賃金に加えて割増賃金を支払う必要があります。通常の割増率は25%ですが、1か月に60時間を超える残業を行った場合には、その超過分に対して50%の割増率が適用されます。

法定内残業とは、企業の就業規則で定められた所定労働時間を超えて働くが、法定労働時間を超えない労働のことを指します。例えば、企業が1日の所定労働時間を7時間と定めている場合、8時間までの労働は法定内残業となります。この法定内残業に対しては、割増賃金は適用されず、通常の賃金が支払われます。これは、企業ごとに設定された労働時間が法定労働時間より短い場合に発生するものです。

具体例
例:法定外残業.png例:法定内残業.png

3.残業代の請求時効と労働者・企業がとるべき対策

残業代の請求には、法律で定められた時効があります。以前は未払い残業代の請求時効は2年間でした。しかし労働基準法の改正により、2020年4月1日以降に発生した未払い賃金については、請求時効が5年間に延長されました。これにより、労働者は過去5年間の未払い残業代を請求することが可能となりました。

労働者の対応策

労働者は、未払い残業代がある場合、時効を迎える前に請求をすることができます。以下のポイントを押さえておくことで、適切な請求を行うことができます。

1.勤怠記録の保存
勤怠記録を正確に保管しておくことが大切です。タイムカードや勤怠管理システムのデータなどを保存し、必要に応じて証拠として提示できるようにしておきましょう。

2.企業との話し合い
未払いが疑われる場合、まずは企業の人事部門や上司と話し合いましょう。多くの場合、話し合いで解決できる可能性があります。

3.労働者基準監督署への相談
自力での解決が難しい場合や企業が対応しない場合、労働基準監督署に相談することができます。労働基準監督署は、企業に対して是正指導を行うことができます。

企業側の対応策

企業は未払い残業代の発生を防ぐため、以下のような対策を講じる必要があります。

1.正確な勤怠管理
労働者の勤務時間を正確に把握し、適切な賃金を支払うためのシステムを導入することが重要です。例えば、タイムカードの徹底管理や勤怠管理システムの利用などが挙げられます。

2.労働時間の適正化
労働者の労働時間を法定労働時間内に収めるよう努め、必要に応じて業務の効率化や勤務シフトの見直しを行うことが求められます。

3.内部監査と教育
定期的に内部監査を実施し、賃金支払いの適正さを確認することが重要です。また、労働者に対する勤怠管理や残業代に関する教育を行い、法令遵守の意識を高めることも有効です。

これらの対策を徹底することで、企業は未払い残業代の発生を未然に防ぎ、労働者との信頼関係を維持することができます。労働者にとっても、適切な賃金を受け取ることで働きやすい環境が整います。

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4.残業代を1分単位で計算しなくて良いケース

通常、残業代は1分単位で計算する必要がありますが、例外的に端数の処理が認められる場合があります。これは労働基準法関係解釈例規に基づき、労働者に不利益とならないことを条件に行われます。

1.1か月単位での端数処理

1カ月単位での残業時間を集計する際、30分未満の端数を切り捨て、30分以上は1時間に切り上げることが認められています。この措置は、事務作業の簡便化を目的としています。しかし、これが適用されるのは、労働者全体の利益を損なわない場合に限られます。

具体例として、月末に残業時間の合計が29分であれば、この29分は切り捨てられます。一方、残業時間の合計が31分の場合、その31分は1時間に切り上げられます。この処理方法により、企業は残業代の計算と支払いを簡素化できますが、日々の勤怠管理においては1分単位での計算が必要です。

具体例
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これらの端数処理が認められているとしても、日常の勤怠管理は1分単位で行うことが基本です。1日の労働時間を正確に記録し、正しい賃金を支払うことで、企業は労働基準法を遵守し、労働者の権利を守ることができます。また、労働者も自身の勤怠記録をしっかりと確認し、必要に応じて適切な対応を求めることが重要です。

5.正しい残業計算を行うメリット

企業側のメリット

1.法令遵守
労働基準法を遵守することで、企業は法的なリスクを回避できます。罰則や罰金を受けることなく、健全な経営を続けることができます。また、労働基準監督署からの指導や是正勧告を未然に防ぐことも可能です。

2.信頼性向上
公正で透明な勤怠管理を行うことで、労働者や取引先からの信頼が高まります。これにより、企業の評判が向上し、優秀な人材の確保やビジネスチャンスの拡大につながります。

3.トラブル防止
未払い残業代が原因で発生する労働争議を未然に防ぐことができます。適切に残業代を支払うことで、労働者からの訴訟リスクを低減し労使関係を円滑に保つことができます。

労働者側のメリット

1.公正な賃金
正確に残業代が支払われることで、労働者は自分の働きに対する正当な報酬を受け取ることができます。これにより、生活の安定やモチベーションの向上につながります。

2.労働意欲の向上
適切な勤怠管理は、労働者の労働意欲を高めます。自分の努力が正当に評価されることで、仕事に対する意欲が増し生産性の向上が期待できます。

3.法的保護
労働基準法に基づく権利が保護されるため、労働者は不当な扱いを受けにくくなります。労働環境が適正に保たれることで、労働者は安心して働くことができます。

正確な勤怠管理は、企業の健全な運営と労働者の働きやすい環境づくりの基礎となります。企業は法令を遵守し、労働者の権利を尊重することで、持続可能な成長を目指すことが重要です。これにより、企業と労働者の双方が利益を享受し、より良い労働環境が実現します。

6.まとめ

労働基準法に基づき、残業時間は1分単位で計算することが求められています。違法な切り捨てや切り上げは労働者に不利益をもたらし、企業には罰則や罰金が科されるリスクがあります。

この記事を通じて、残業時間の正確な計算方法とその重要性を理解し、健全で公正な労働環境を築くための一助となることを願っています。企業と労働者が共に利益を享受し、持続可能な成長を目指しましょう。

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