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2024.08.13コラム

副業の残業代はだれが払う?増える副業への企業の対応

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副業を希望する人が増える中、企業も副業を容認する動きが加速しています。しかし、法定労働時間や残業代の計算など、新たな課題も浮上しています。本記事では、副業のメリットとデメリットを企業と労働者の視点から解説し、副業がもたらす可能性とリスクを探ります。企業が副業を認めることで得られる効果と、その対応方法について知りたい方におすすめの記事です。

目次

1.企業・労働者の副業への変化
2.労働時間の上限と本業・副業の関係
3.残業代は本業と副業のどちらが支払うか?
4.企業の副業への対応方法
5.まとめ

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1.企業・労働者の副業への変化

近年、副業を認める企業や副業を始める労働者が増えています。政府の調査によると副業を希望する労働者、すでに副業を行っている労働者は右肩上がりで増えています。
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(労働絵施策審議会労働条件分科会 令和元年10月18)

また、副業を行う理由として多いものは「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」「収入を増やしたいから」など金銭的な理由が大きな割合を占めています。

このように副業の需要が増えていく中で問題となるのが労働時間の計算です。労働者は1日・1週間で働ける労働時間の上限が決まっているため、本業と副業の労働時間がどのような関係にあるのか確認しましょう。

2.労働時間の上限と本業・副業の関係

労働者は1日・1週間の労働時間の上限が以下のように決められています。
労働基準法第32条.png
労働者は原則、1日8時間、1週40時間を上限に労働することが可能となります。さらに、上記の規定は同一の事業場に限定されない点がポイントとなります。

つまり、複数の勤務先で労働する場合は、それぞれの勤務先で「1日8時間、1週40時間」ではなく、それぞれの勤務先での労働時間を通算して「1日8時間、1週40時間」が上限となるということです。

労働時間の通算方法は、労働契約が締結された順番に労働時間の通算を行います。

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3.残業代は本業と副業のどちらが支払うか?

法定労働時間を超えた分の残業代は本業と副業のどちらが支払うことになるのでしょうか?
原則として「後から」労働契約を締結した企業が支払うこととなります。理由として、企業が労働契約を締結する際に使用者は労働者が他の事業場で働いている実態があるか確認をする義務が生じるためです。

他の事業場で働いている=法定労働時間を超える可能性があると知ったうえで雇用することとなるため、後から労働契約を締結した企業に残業代の支払い義務があるとされています。
労働させる順番が変わったとしても残業代の支払い義務は後から契約を行った企業にあります。

しかし、先に労働契約を締結した企業も、副業との合計労働時間が法定労働時間を超えると認識していながら副業許可をし、労働時間の延長をさせる場合は、割増賃金を支払う必要が発生します。

本業と副業における労働時間の通算の考え方は、近年見直しが行われております。政府の規制改革推進会議の中で議論が進められており、以下の点において改正の動きが動きがみられる可能性があります。

労働法38条の解釈を改め、同一事業主の別事業場である場合に限り労働時間を通算し、別の事業主が行う複数事業場での労働については労働時間として通算せず、割増賃金の支払いも不要にする。
過重労働の防止という観点から、通算ルールを残し過重労働の実効性確保のための新たな措置を講ずる。

4.企業の副業への対応方法

企業に雇用される雇用型の副業には労働時間を通算するルールがあり、労働時間の管理が煩雑になります。
そのため、雇用型の副業を認めるのか、非雇用型の副業のみ認めるのかが企業として判断がわかれてきます。厚生労働省のガイドラインにもある通り、政府は副業を推進しています。企業・労働者双方にとってメリット・デメリットがあるため総合的に判断して、自社の副業ルールをどのように定めるのか検討する必要があります。

従業員のメリット
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新たな知識・スキルアップ
副業をすることで、労働者は新たな知識を獲得し、スキルアップを図るという大きなメリットを得られます。副業は本業とは異なる分野での経験を積むこともできるため、新しい視点やスキルを得ることができます。また、自分の専門分野に関連する副業を選ぶことで、知識をさらに深めることが可能です。

本業以外の収入源の確保
収入を増やす手段としては、昇給や転職もありますが、これらは本人のスキルや会社の状況によって難しい場合があります。一方、副業であれば、これまでの経験や得意分野を活かした高単価の案件を見つけることで、月に数万円以上の収入を得ることが可能です。

キャリアの選択肢が広がる
副業を通じて様々な分野の経験を積むことで、異なる業界や職種における知識とスキルを得られます。これにより、自身の適性や興味を再発見し、新たなキャリアパスを模索する機会が生まれます。さらに、副業で得た実績やスキルは、転職や昇進の際にも強みとなり、将来的に多様な職業選択の可能性を広げることにつながります。

従業員のデメリット
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確定申告が必要となる可能性
副業によって収入が増えることで、労働者は自分自身で税金を管理し、確定申告を行う必要が出てきます。普段確定申告を行わない人にとっては手続きは複雑であり、負担となる可能性があります。

体調管理やスケジュール管理の難しさ
本業と副業を両立することで、労働時間が増加し、休息時間が減少するため、体調を崩しやすくなる可能性があります。さらに、複数の仕事を効率的にこなすためには、スケジュールをしっかりと管理する必要がありますが、タスクの多さや不測の事態が重なると、スケジュール管理が困難になり、ストレスが増大することがあります。これらの要因により、長期的な健康への影響が懸念されます。

企業のメリット
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優秀な人材の流出防止
労働者に副業の自由を認めることで、彼らのキャリアにおける多様なニーズを満たすことができ、企業への満足度が向上します。副業を通じて新たなスキルを身につける機会を提供することで、労働者の成長意欲を刺激し、企業への長期的なコミットメントを促します。これにより、他の企業への転職を考える社員を引き留める効果が期待されます。

労働者のスキルアップ
労働者は本業以外の分野で新たなスキルや知識を得ることができ、これにより業務の幅を広げることが可能です。労働者がさまざまな経験を積むことで、企業にとっても新しいアイデアや視点が組織内にもたらされ、全体の生産性や競争力の向上につながります。結果的に、労働者のスキル向上は企業の成長にも寄与します。

企業のデメリット
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労働時間の管理が煩雑になる
労働者が本業以外に副業を行うことで、労働時間の把握や適切な管理が難しくなり、過重労働による健康問題や法令違反のリスクが増大します。企業は労働者の勤務時間を正確に記録し、働きすぎを防ぐための対策を講じる必要がありますが、複数の仕事を抱える労働者のスケジュール管理は複雑で手間がかかることが多いです。

情報漏洩などのリスク
労働者が副業を通じて他社と関わることで、自社の機密情報が外部に漏れるリスクが高まります。また、労働者が異なるプロジェクトを同時に進める中で、情報管理が適切に行われないと、誤って機密情報を開示してしまう可能性もあります。これを防ぐためには、企業は情報セキュリティのルールを厳格に設定し、労働者に対して適切な研修を行う必要があります。

5.まとめ

副業の普及により、企業と労働者は新しい働き方への変化を求められています。法定労働時間の上限を守ることは重要ですが、残業代の支払い責任や情報漏洩などの課題も存在します。企業は副業を認めることで、労働者のスキル向上や満足度の向上を図ることができますが、労働時間の管理や情報セキュリティ対策が必要です。これらのバランスを取ることで、企業と労働者はより柔軟で効果的な働き方を実現できます。

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