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2024.10.01コラム

2025年施行!『65歳までの雇用確保』義務化のポイントと企業対応策とは?

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2025年4月から施行される「65歳までの雇用確保」義務化は、日本の少子高齢化と労働力不足に対処するための重要な施策です。企業はこれに対応するため、定年延長や継続雇用制度の導入を検討しなければなりません。本記事では、この新制度の詳細と、企業が取るべき具体的な対応策について解説します。さらに、定年延長によるメリットと課題、高齢者雇用に活用できる助成金の情報も紹介。65歳以降も働きたい従業員と企業の双方にとっての重要なポイントを分かりやすくまとめました。

目次

1.2025年施行「65歳までの雇用確保」とは?
2.定年延長は義務ではない!選べる3つの対策
3.企業が準備すべき対応策とは?
4.定年延長によるメリットと課題
5.高齢者雇用で活用できる助成金
6.就業規則や賃金制度の見直しが重要
7.勤労の獅子なら定年後の再雇用、雇用延長のにも対応可能
8.まとめ

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1.2025年施行「65歳までの雇用確保」とは?

2025年4月から始まる「65歳までの雇用確保」は、全ての企業に対して、従業員が希望する場合に65歳まで働ける環境を提供することを義務づける制度です。この義務は、日本全体で進行する少子高齢化に伴う労働力不足を補うために設けられました。特に中小企業や大企業を問わず、規模や従業員数にかかわらず、全ての企業がこの義務の対象となります。

この「65歳までの雇用確保」は、65歳定年制の義務化ではなく、企業が65歳までの雇用を確保するための選択肢を提示することが求められています。つまり、企業は65歳まで働ける機会を従業員に提供するため対策を講じなければなりません。

「65歳までの雇用確保」が義務化された背景

この制度が導入される背景には、日本の少子高齢化と労働力の減少という大きな問題があります。現役世代が減少していく中で、社会全体で働く人の数を増やし、生産性を維持するためには、高齢者の労働力を活用することが不可欠です。特に、60歳を超えても働く意欲を持つ従業員が増えており、彼らに対して安定した就業機会を提供することは、企業の持続的な成長にもつながります。

さらに、年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられている現状を考えると、65歳までの安定した収入を確保するためにも、雇用機会の確保は非常に重要な施策です。特に、従業員にとっても企業にとっても、年金支給までの生活を支える手段として、この制度は大きなメリットとなります。

2.定年延長は義務ではない!選べる3つの対策

65歳までの雇用確保は義務化されますが、定年延長そのものが義務化されるわけではありません。企業は65歳定年制を導入するか、他の選択肢を選ぶか、柔軟に対応することができます。具体的には、以下の3つの方法からいずれかを選択することが可能です。

1. 定年延長
定年延長は、現行の定年年齢を60歳から65歳に引き上げる方法です。これにより、60歳を迎えた従業員が定年退職することなく、65歳まで働き続けることができることとなります。定年延長を選択する企業にとってのメリットは、従業員が同じ労働条件で引き続き働けるため、給与や福利厚生などの条件が安定しており、従業員のモチベーションを維持しやすい点にあります。
一方で、デメリットとしては、従業員の高齢化に伴う人件費の増加や、職場全体の年齢構成のバランスが崩れる可能性があります。そのため、定年延長を行う際には、若手社員とのキャリアパスや昇進機会の調整を行い、組織内の活力を維持する工夫が求められます。

2. 継続雇用制度
継続雇用制度は、60歳で定年退職した後も、希望する従業員に対して65歳まで雇用を継続する制度です。これは「雇用延長」と「再雇用」の2種類に分けられます。雇用延長の場合、退職せずにそのままの条件で働き続ける一方、再雇用では一度定年退職し、新たに契約社員や嘱託社員として再雇用される形となります。
継続雇用制度のメリットは、定年延長に比べて柔軟性が高く、企業側は従業員の勤務条件を調整しやすい点です。たとえば、再雇用では給与や業務内容を見直すことができるため、企業にとってのコスト負担を軽減できる場合があります。一方で、再雇用に伴う労働条件の変更が、従業員のモチベーション低下につながるリスクがあるため、適切なコミュニケーションと説明が欠かせません。

3. 定年制の廃止
定年制の廃止は、定年そのものを撤廃し、従業員が希望する限り働き続けられる仕組みです。定年を設けずに、年齢にかかわらず労働力を活用できるため、特に経験や専門知識を持ったベテラン従業員を長期にわたって活用したい企業にとっては有効な選択肢です。
ただし、定年制を廃止する場合、従業員の退職時期が不透明になるため、人材の適切な配置や計画的な人事管理が求められます。また、高齢者が増えることで若手社員のキャリア形成や昇進機会が制限されるリスクがあるため、バランスを保った人材配置が重要です。組織全体の柔軟性を損なわないためにも、定年廃止に伴う新しい評価制度の導入や、年齢にかかわらず公平な人事制度を構築する必要があります。

3.企業が準備すべき対応策とは?

2025年4月までに企業が準備すべき対応策として、主に以下の4つが挙げられます。

1. 就業規則の見直し
最初に取り組むべきは就業規則の見直しです。定年延長や継続雇用制度を導入する際には、労働条件や雇用形態の変更が発生するため、就業規則の内容をそれに応じて適切に修正する必要があります。例えば、60歳を超えても雇用を継続する場合の条件や手続きを明記することが求められます。
また、就業規則を変更した場合は、労働基準監督署に届け出る義務があります。この手続きを怠ると、法的な問題が発生する可能性があるため、規則変更後の適切な手続きを踏むことが重要です。さらに、労働条件に大きな変更が生じる場合は、従業員全員に対してその内容を周知し、新たな雇用契約書や労働条件通知書を作成する必要があります。

2. 賃金制度の見直し
次に、賃金制度の見直しが非常に重要です。定年延長や再雇用制度に伴い、高齢従業員の賃金をどのように設定するかは、従業員のモチベーションや企業のコストに直結する問題です。特に、再雇用時に賃金が大幅に減額されるケースが多いですが、適切な賃金体系を導入しないと、従業員の意欲低下につながる恐れがあります。
賃金体系を見直す際には、労働内容や成果に応じた公正な評価基準を設定することがポイントです。また、企業の財政負担を軽減するために、フレックスタイム制度や業務に応じたインセンティブ制度を導入することも考慮すべきです。賃金制度は、従業員が納得できる透明性のあるものにすることで、長期にわたって意欲を持って働き続けてもらうことができます。

3. シニア従業員の処遇改善
シニア従業員の処遇改善は、65歳までの雇用確保をスムーズに進めるために不可欠です。高齢従業員が働きやすい環境を提供するためには、人事制度や評価制度の見直しが必要です。具体的には、シニア層の健康状態や勤務形態に応じた柔軟な労働環境を整えることが求められます。例えば、勤務日数や勤務時間の調整、体力に応じた業務内容の見直しが有効です。
さらに、シニア従業員がこれまでの経験を活かしつつ、若手社員の指導やサポート役に回るなど、適材適所の配置を行うことで、企業全体の生産性向上にもつながります。こうした取り組みにより、高齢従業員のモチベーションを維持し、職場での貢献を最大限に引き出すことができます。

4. 継続雇用の意思確認
最後に、継続雇用の意思確認を行うことが重要です。近く定年を迎える従業員に対して、65歳までの雇用を希望するかどうかを事前に確認し、その意思に基づいて適切な対応を準備する必要があります。特に、継続雇用の意思確認は個別に行うことで、従業員一人ひとりの意向を尊重し、誤解やトラブルを避けることができます。
この際、単に口頭で確認するのではなく、書面による再雇用希望申出書などの手続きを通じて意思を確認することが望ましいです。書面での確認により、企業側も従業員側も記録が残るため、後々のトラブルを防ぐことができます。また、継続雇用後の労働条件や待遇についても事前に明示し、双方が納得できる形で合意を取り交わすことが大切です。

4.定年延長によるメリットと課題

定年延長は、企業と従業員双方にとって大きなメリットをもたらす一方、いくつかの課題も生じるため、バランスの取れた対応が求められます。

課題:人件費の増加と組織の高齢化
最も顕著な問題の一つは人件費の増加です。定年延長により、高齢従業員の給与や福利厚生費を企業が引き続き負担しなければならないため、特に中小企業にとってはコストの圧迫要因となり得ます。さらに、役職手当や退職金の支払いタイミングの調整など、財務的な負担が重くのしかかる場合もあります。これに対処するためには、賃金体系の見直しや労働時間の調整が必要となり、企業は柔軟な対応を迫られることになるでしょう。

もう一つの課題は、組織の高齢化です。高齢者が長く働き続けることで、若い世代のキャリアパスが見えにくくなり、世代間のギャップが生じることがあります。特に、若年層が管理職に就く機会が限られると、職場内での昇進のモチベーションが低下し、人材流出を引き起こす可能性もあります。また、世代間のコミュニケーションの違いや価値観の相違が、職場の連携に影響を与えることも考えられます。このような組織の高齢化は、企業の柔軟性やイノベーションを阻害するリスクを伴うため、若年層とのバランスを考えた人材配置が重要です。

課題克服に向けた対策
これらの課題を克服するためには、労働環境の整備評価制度の見直しが必要不可欠です。特に、シニア従業員が意欲を持って働き続けるためには、適切な業務内容の割り当てや、健康管理に配慮した勤務体系が求められます。たとえば、フレックスタイム制度や短時間勤務制度を導入することで、高齢従業員の負担を軽減し、長く働ける環境を整えることが可能です。また、役職や業務内容に応じた公正な評価制度を導入し、高齢者だけでなく若年層もやる気を持って働けるようにすることが企業全体の活力維持に重要です。
さらに、世代間のギャップを埋めるための施策も必要です。例えば、若い世代と高齢世代が協力してプロジェクトに取り組む機会を増やすことで、互いのスキルや知識を活かし合う環境を作ることができます。これにより、若手社員は高齢従業員の経験から学び、高齢従業員も若い世代の新しい発想に触れることができるため、組織全体の生産性向上に繋がります。

5.高齢者雇用で活用できる助成金

高齢者の雇用促進に向け、企業は様々な助成金制度を活用することができます。特に「65歳超雇用推進助成金」は、多くの企業にとって大きな支援策となります。この助成金は、高齢者が65歳以上でも安心して働き続けられる環境を整備するため、企業が定年延長や継続雇用制度の導入などの措置を講じた際に支給されます。
具体的に、この助成金が支給される条件には以下のような施策があります。

1. 65歳以上への定年引き上げ:企業が現在の定年年齢を65歳以上に引き上げた場合、この助成金が適用されます。特に少子高齢化の中で労働力の維持が重要視される今、定年を引き上げる企業は増加しています。これは、労働力の確保と高齢者の経済的安定の両方を達成できるため、企業にとっても大きなメリットです。
   
2. 定年制の廃止:企業が定年制度そのものを廃止し、年齢に関係なく働き続けられる環境を整える場合も助成金が支給されます。この選択肢は、経験豊富で優秀な人材を年齢に関係なく活用したい企業にとって有効です。ただし、定年制の廃止は退職時期が不定になるため、計画的な人材管理が求められます。

3. 66歳以上までの継続雇用制度の導入:企業が従業員の希望に応じて66歳以上までの継続雇用を行う制度を導入した場合、この助成金の対象となります。この制度により、シニア層の労働意欲を高め、長く活躍できる環境を整えることが可能です。

4. 他社による継続雇用制度の導入:他社によっても継続雇用が提供される制度を導入した場合にも、この助成金が支給されます。これは、例えばグループ企業内での転籍や、関連会社での再雇用などが該当します。企業の枠を超えて継続雇用を行うことで、シニア人材の活用範囲が広がり、労働力の有効活用が進むでしょう。

他にも活用できる助成金の種類

「65歳超雇用推進助成金」以外にも、高齢者雇用を促進するための助成金制度がいくつか存在します。たとえば、高年齢者評価制度雇用管理改善を行った企業にも助成金が支給されます。これには、賃金や労働時間、健康管理制度の改善が含まれ、企業が高齢従業員の労働条件を見直し、働きやすい環境を整えるための支援を受けることができます。

6.就業規則や賃金制度の見直しが重要

企業が最も優先して取り組むべき課題の一つは、就業規則や賃金制度の見直しです。この見直しは、法的な義務であるだけでなく、企業の生産性や従業員のモチベーションに直接的な影響を及ぼすため、慎重かつ早急に進める必要があります。

就業規則の見直し
まず、就業規則には「定年」「退職」などの項目が明記されており、これらの規定を変更しなければなりません。具体的には、継続雇用制度や定年延長を導入する際に、就業規則を新しい法令に適合させることが求められます。例えば、従業員が65歳まで働くことを希望した場合の手続きや、再雇用に関する条件などを就業規則に明確に記載することが必要です。

加えて、就業規則の変更は、労働基準法に基づき労働基準監督署に届け出る義務があります。これを怠ると、法的な問題が発生する可能性があるため、各企業は規則変更後の手続きを正確に行うことが重要です。また、就業規則を見直す際には、従業員全員に対して変更内容を周知し、理解を深めてもらうことも忘れてはなりません。

賃金制度の見直し
次に、賃金制度の見直しも不可欠です。特に、高齢従業員の賃金に関しては、再雇用時に大幅な減額が行われることが多く、これが従業員のモチベーション低下を招く原因となり得ます。再雇用後もシニア従業員が意欲を持って働けるようにするためには、適切な評価制度とともに、労働内容や責任に見合った報酬体系を構築することが求められます。

例えば、役職手当や職務に応じた賃金が減少する場合、代替として成果に基づくインセンティブ制度を導入することで、従業員のやる気を維持する方法もあります。また、フレキシブルな働き方を認め、勤務時間や労働日数に応じた給与体系を整備することも、高齢従業員が無理なく働ける環境作りに寄与します。

さらに、退職金制度の見直しも重要となります。60歳で退職金が支払われる企業が多い中、定年延長や再雇用後に退職金の支払いタイミングをどのように設定するかが問題となります。企業は、従業員が納得できる形で退職金を支給するタイミングや金額を決定し、それを明確に就業規則に反映させることが必要です。

7.勤労の獅子なら定年後の再雇用、雇用延長にも対応可能

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8.まとめ

2025年に施行される「65歳までの雇用確保」義務化は、日本の労働市場において重要な転換点となります。少子高齢化に伴う労働力不足を補うため、企業は定年延長や継続雇用制度などの対応を検討しなければなりません。また、適切な賃金制度の見直しやシニア従業員の処遇改善を進めることで、企業は高齢者の労働意欲を引き出し、持続可能な成長を実現できます。

この制度に備えるため、企業は今から計画的に就業規則の見直しや助成金の活用を進めることが求められます。これにより、65歳以上の従業員も安心して働ける環境を整え、企業にとっても高齢者の経験やスキルを最大限に活用できる職場を作り上げることができるでしょう。

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