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裁量労働制の対象拡大はいつから?現行20業務との比較と企業が今から備える実務チェックリスト

「裁量労働制の対象が広がるらしい。うちの営業職も対象になるのか?」―2026年2月、高市首相が施政方針演説で裁量労働制の見直しを表明して以来、人事・労務担当者の間でこんな声が飛び交っています。
経団連がかねて要望してきた対象業務の拡大が、いよいよ現実味を帯びてきました。専門業務型の20業務にAI・データサイエンス関連職が加わるのか。企画業務型がソリューション営業にまで広がるのか。2027年以降の施行を見据えた議論が、労働政策審議会と成長戦略会議で並行して進んでいます。
しかし、対象が拡大すれば「自由な働き方」が実現するという単純な話ではありません。連合や過労死防止学会は「定額働かせ放題」への懸念を強く表明しており、賛否は真っ二つに割れています。
この記事では、裁量労働制の対象拡大をめぐる議論を時系列で整理し、現行制度との比較、拡大が検討されている業務の具体像、そして企業の人事・労務担当者が今から着手すべき勤怠管理と労使協定の見直しポイントを解説します。
目次
1. 裁量労働制の対象拡大とは?議論の全体像を把握
2. 時系列で追う--対象拡大議論はどこまで進んでいるか
3. 現行の対象業務20種と拡大候補を比較する
4. 賛成派と反対派--対象拡大をめぐる論点を整理する
5. 企業が今から準備すべき5つの実務ポイント
6. よくある質問(Q&A)
7. 「勤労の獅子」で裁量労働制の勤怠管理を整える
8.まとめ
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1. 裁量労働制の対象拡大とは?議論の全体像を把握

1-1. そもそも裁量労働制の「対象業務」はどう決まっているのか
裁量労働制には2つの類型があります。労働基準法第38条の3に定められた専門業務型と、同法第38条の4に定められた企画業務型です。
専門業務型は、業務の性質上、遂行方法を労働者の裁量に大幅に委ねる必要がある業務として、厚生労働省令と告示で20業務が限定列挙されています。2024年4月の省令改正でM&Aアドバイザリー業務が追加され、19業務から20業務に拡大したのが直近の変更です。
企画業務型は、事業運営に関する企画・立案・調査・分析の業務に限定されており、対象事業場も本社や事業運営上重要な決定が行われる事業場に限られています。導入には労使委員会の5分の4以上の決議が必要で、ハードルはかなり高い。
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、裁量労働制を導入している企業の割合は専門業務型が2.1%、企画業務型が1.0%にとどまります。従業員1,000人以上の企業でも専門業務型8.7%、企画業務型5.0%です。制度自体の普及率が低いまま、対象拡大の議論だけが先行している--これが現在の状況です。
1-2. 「対象拡大」で何が変わるのか----2つの方向性
今回の対象拡大議論には、大きく2つの方向性があります。
方向性1:専門業務型への業務追加
現行20業務に新たな業務を追加する方法です。AI・データサイエンス関連職、ITコンサルタント、金融アナリストなど、高度な専門知識を活用する業務が候補に挙がっています。
方向性2:企画業務型の適用範囲拡大
こちらはより影響範囲が広いです。現在は「企画・立案・調査・分析」に限定されている対象業務を、ソリューション型の法人営業やコンサルティング営業にまで広げる案です。経団連は、労使の合意があれば対象業務を自主的に決められる仕組みを提案しています。
いずれの方向性も、「対象が増える=裁量労働制で働く人が増える=勤怠管理の対象パターンが複雑になる」ことを意味します。人事・労務担当者にとっては、制度設計と運用の両面で準備が必要になる局面です。
2. 時系列で追う--対象拡大議論はどこまで進んでいるか
2-1. 2015〜2018年:安倍政権下での挫折と「高プロ」への転換
裁量労働制の対象拡大は、実は今回が初めてではありません。2015年、安倍政権は「働き方改革実行計画」の一環として、企画業務型裁量労働制を法人向け提案営業(いわゆるソリューション営業)に拡大する法案を国会に提出しました。
しかし2018年、厚生労働省が国会に提出した裁量労働制に関するデータに不適切な比較が含まれていたことが発覚。裁量労働制の労働者のほうが一般労働者より労働時間が短いとする比較データが、異なる条件のデータを並べたものだったのです。この問題を受けて、裁量労働制の対象拡大部分は法案から削除されました。
代わりに成立したのが「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)です。年収1,075万円以上の高度専門職を対象に、労働時間規制を外す制度として2019年4月に施行されました。ただし、高プロの適用者数は2024年時点で全国でわずか1,000人前後にとどまり、普及したとは言いがたい状況です。
2-2. 2024年4月:裁量労働制の「規制強化」改正が施行
対象拡大の議論とは反対に、2024年4月には裁量労働制の規制を強化する改正が施行されました。主な改正内容は以下のとおりです。
① 本人同意と同意撤回の手続き義務化
専門業務型でも本人同意を得ることが必須になり、同意撤回の手続きを労使協定に定めることが義務化されました。撤回を申し出た労働者に対する不利益取扱いも禁止されています。
② 健康福祉確保措置の強化
勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、臨時の健康診断の実施など、対象労働者の健康を守るための措置が追加されました。
③ 労使委員会の開催頻度と情報開示
企画業務型では労使委員会を6か月に1回以上開催し、賃金・評価制度の内容を使用者が労使委員会に説明することが決議事項に追加されました。
④ 記録の保存義務
労働時間の状況、健康福祉確保措置の実施状況、同意および同意撤回の記録を、決議の有効期間中および満了後5年間(当面3年間)保存することが義務付けられました。
この2024年改正は「対象拡大の前に、まず現行制度の運用を適正化する」という位置づけでした。対象拡大を議論するうえでも、この改正で導入された健康福祉確保措置や同意撤回の枠組みが前提条件になります。
2-3. 2025年10月〜2026年2月:高市政権で議論が一気に加速
2025年10月に就任した高市早苗首相は、就任直後に上野賢一郎厚生労働大臣に対し、労働時間規制の緩和検討を指示しました。これを受けて、労働政策審議会の労働条件分科会で裁量労働制の見直し議論が再始動します。
2026年2月20日、高市首相は衆参両院の本会議で初の施政方針演説を行い、次のように述べました。「働き方改革の総点検においてお聞きした働く方々のお声を踏まえ、裁量労働制の見直し、副業・兼業に当たっての健康確保措置の導入、テレワークなどの柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進めます」。裁量労働制の見直しが、政権の看板政策として正式に位置づけられた瞬間です。
日本経済新聞の報道によると、政府案は過半数労働組合がある企業に限定したうえで対象業務の範囲を広げるという方向で検討が進んでいます。2026年夏に向けて成長戦略会議で具体案がまとまり、2027年以降の施行を目指す労働基準法改正の目玉となる見通しです。
3. 現行の対象業務20種と拡大候補を比較する
3-1. 専門業務型:現行20業務の全リスト
2024年4月の省令改正後、専門業務型裁量労働制の対象となる20業務は以下のとおりです。
① 新商品・新技術の研究開発または人文科学・自然科学に関する研究
② 情報処理システムの分析・設計
③ 新聞・出版の取材・編集または放送番組制作の取材・編集
④ デザインの考案(衣服、室内装飾、工業製品、広告等)
⑤ 放送番組・映画等のプロデューサー・ディレクター
⑥ コピーライター
⑦ システムコンサルタント
⑧ インテリアコーディネーター
⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作
⑩ 証券アナリスト
⑪ 金融工学による金融商品の開発
⑫ 大学における教授研究(主として研究に従事するもの)
⑬ 公認会計士
⑭ 弁護士
⑮ 建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)
⑯ 不動産鑑定士
⑰ 弁理士
⑱ 税理士
⑲ 中小企業診断士
⑳ M&Aアドバイザリー業務(2024年4月追加)
この20業務に共通する特徴は、高度な専門知識や創造性が求められ、業務の遂行方法を使用者が逐一指示することが困難な業務であるという点です。裏を返せば、指示を受けて遂行する業務は対象外です。
▶裁量労働制の基本的な仕組みについては、関連記事「裁量労働制をわかりやすく解説|専門型・企画型の違いから2024年改正・勤怠管理の実務まで」で詳しく解説しています。
3-2. 現行制度と拡大後の比較―何がどう変わるのか
各種報道や経団連の要望書、労働政策審議会での議論をもとに、拡大候補として浮上している業務を整理します。
専門業務型への追加候補:
・AI・機械学習エンジニア、データサイエンティスト
・サイバーセキュリティの専門職
・高度ITコンサルタント(ERP導入、DX推進等)
・ESG・サステナビリティの専門アナリスト
企画業務型の適用範囲拡大候補:
・ソリューション型の法人営業(提案型営業)
・経営コンサルタント、戦略コンサルタント
・マーケティング戦略の企画・分析業務
・事業開発(ビジネスデベロップメント)
特に注目されているのが法人営業職への拡大です。経団連は従来から、顧客の課題をヒアリングし解決策を自ら設計・提案するソリューション営業は、「企画・立案・調査・分析」の要素を含むと主張してきました。実現すれば、営業部門に裁量労働制を適用する企業が一気に増える可能性があります。
ただし、ここには重大な論点があります。「提案型営業」と「ルート営業」の線引きをどう行うのか。労働者側からは、対象業務の定義があいまいなまま拡大すれば、実態として裁量がない営業職にまで適用される危険性が指摘されています。
3-3. 専門業務型と企画業務型の比較一覧
現行制度と、拡大が実現した場合の変化を整理すると、次のようになります。
【比較ポイント1:対象者の規模】
現行の裁量労働制適用者は、厚生労働省の裁量労働制実態調査(2021年)によると約116万人(専門型約83万人、企画型約33万人)。対象拡大が実現すれば、IT・営業・コンサル職を中心に適用対象者が数十万人規模で増加する見込みです。
【比較ポイント2:導入のハードル】
政府案では、過半数労働組合がある企業に限定して対象拡大を認める方向です。従業員の過半数が加入する労働組合がない企業では、拡大後の業務であっても裁量労働制を適用できない可能性があります。
【比較ポイント3:健康福祉確保措置】
2024年改正で強化された健康福祉確保措置(勤務間インターバル、深夜業回数制限、臨時健康診断等)は、拡大後の対象業務にも当然適用されます。対象者が増えれば、これらの措置を管理する業務負荷も比例して増大します。
4. 賛成派と反対派―対象拡大をめぐる論点を整理する

4-1. 経済界が推進する理由―「柔軟な働き方」と「生産性向上」
経団連は「2026年版 経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)で、裁量労働制の拡充を最優先課題の一つに位置づけています。その主な論拠は3つです。
第一に、労働者の自律的な働き方を支援するという観点。 時間ではなく成果で評価される仕組みは、働く場所や時間を自分で決めたいという労働者のニーズに合致すると主張します。
第二に、企業の生産性向上。 日本経済新聞が2026年3月に実施した「社長100人アンケート」では、6社に1社が「労働時間を増やしたい」と回答。人手不足の中、限られた人員で成果を最大化するには、時間に縛られない柔軟な働き方が必要だという声は根強い。
第三に、国際競争力の確保。 欧米のホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)と比較して、日本の制度は硬直的すぎるとの指摘があります。
労働政策審議会の使用者側委員からは「労使で対象業務を自主的に決められる仕組みにすべき」との意見も出ています。法律で業務を限定列挙するのではなく、労使の合意があれば柔軟に対象を設定できるようにする案です。
4-2. 労働者側が懸念する理由―「定額働かせ放題」のリスク
一方、連合(日本労働組合総連合会)は対象拡大に慎重な姿勢を崩していません。連合の「経労委報告に対する見解」(2026年1月)では、次の点が指摘されています。
① 長時間労働の助長
みなし労働時間制のもとでは、実際に何時間働いても「みなし時間」しか記録されない。対象を広げれば、長時間労働が見えにくくなる労働者がさらに増えるという懸念です。
② 「裁量」の実態がない適用
形式上は裁量労働制でも、実際には上司から細かい指示を受けて働いているケースが少なくありません。厚生労働省の裁量労働制実態調査(2021年)でも、専門型適用労働者の約2割が「業務量を自分で調整できない」と回答しています。
③ 過労死リスクの増大
過労死防止学会は、高市政権の裁量労働制見直しに対する反対声明を公表し、業務上の過労死・過労自殺の労災認定件数が2020年度の802件から2024年度には1,304件に増加している事実を指摘。対象拡大は過労死リスクを高めると警告しています。
全労連(全国労働組合総連合)はさらに踏み込んで、裁量労働制そのものの廃止を求める談話を発表しました。「裁量労働制は本質的に使用者に有利な制度であり、対象拡大は『定額働かせ放題』の範囲を広げるだけだ」というのが、その立場です。
人事・労務担当者としては、どちらの主張にも一理あることを理解したうえで、自社の実態に照らして判断する必要があります。「対象に含まれるから適用する」のではなく、「本当にその職種に裁量があるのか」「健康管理は十分にできるのか」を冷静に見極めることが求められます。
5. 企業が今から準備すべき5つの実務ポイント

5-1. ポイント1:自社の対象候補職種をリストアップする
法改正が施行される前の今だからこそ、先手を打って準備を進めたいところです。まずは、自社の職種の中で対象拡大の候補になりそうなポジションを洗い出します。
具体的には、以下の基準で棚卸しを行ってください。
✓ 業務の遂行方法について、上司が逐一指示を出しているか、それとも本人の裁量に委ねているか
✓ 業務の成果が「時間」ではなく「質」で評価される性質の仕事か
✓ 1日の業務スケジュールを、本人が自分で組み立てているか
✓ 顧客の課題を分析し、自ら解決策を企画・提案する要素があるか
4つすべてに該当する場合、裁量労働制の対象候補となる可能性が高いです。逆に、1つでも該当しない場合は、仮に法律上の対象業務に含まれても、適用は慎重に検討すべきです。「対象だから適用する」のではなく「実態として裁量があるから適用する」が正しい順序です。
5-2. ポイント2:現行の労使協定・労使委員会決議を総点検する
既に裁量労働制を導入している企業は、現行の労使協定(専門業務型)や労使委員会の決議(企画業務型)が、2024年改正の要件をすべて満たしているか再確認してください。
特に以下の項目は、対象拡大に備えるうえでも重要です。
① 同意撤回の手続き
撤回の申出先となる部署・担当者、撤回の方法が具体的に定められているか。撤回後に不利益取扱いが生じない運用になっているか。
② 健康福祉確保措置の実効性
制度として定めているだけで、実際に運用されていない措置はないか。勤務間インターバルの確保状況、深夜業の回数を定期的にモニタリングしているか。
③ 記録の保存体制
労働時間の状況、健康福祉確保措置の実施記録、本人同意の記録が、法定の保存期間(当面3年間)分きちんと保管されているか。
対象拡大で新たな職種を追加する場合、既存の労使協定や決議を改定する必要があります。現行制度の運用に不備があれば、拡大時にそのまま問題が拡大するだけ。今のうちに基盤を固めておくのが得策です。
5-3. ポイント3:勤怠管理システムで「みなし」と「実態」の両方を記録する体制を構築する
裁量労働制の対象者が増えれば、勤怠管理の複雑さは確実に増します。通常の労働時間制の社員、フレックスタイム制の社員、変形労働時間制の社員に加えて、裁量労働制の社員が増えるからです。
裁量労働制では、みなし労働時間に基づく賃金計算と、実際の労働時間に基づく健康管理の2つの時間管理を同時に行う必要があります。
みなし労働時間の管理: 労使協定で定めたみなし労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合、超過分について時間外労働の割増賃金が発生します。たとえばみなし労働時間を9時間と定めた場合、1時間分の時間外手当を固定で支給する設計になります。
実労働時間の管理: みなし労働時間とは別に、出退勤時刻や在社時間を客観的に記録する義務があります。これは2024年改正で強化された健康福祉確保措置の基盤です。実労働時間がみなし労働時間を大幅に上回っている場合、安全配慮義務の問題が生じます。
加えて、深夜労働(22時〜翌5時)と休日労働は、裁量労働制であっても実時間ベースで割増賃金を支払う必要があります。「みなし」だから深夜も休日も関係ない----これはよくある誤解です。勤怠管理システムで深夜帯の勤務と休日出勤を自動検知し、正確に割増賃金を計算できる体制を整えてください。
5-4. ポイント4:過半数労働組合の有無を確認する
政府案では、対象拡大を認める条件として過半数労働組合がある企業に限定する方向が報じられています。これが実現した場合、従業員の過半数が加入する労働組合がない企業は、拡大後の対象業務に裁量労働制を適用できません。
自社に過半数労働組合が存在するかどうかを、あらためて確認してください。「労働組合はあるが、組合員数が過半数に達していない」というケースも少なくありません。
過半数労働組合がない企業が多い中堅規模(100〜300名)の企業にとって、この条件は対象拡大の恩恵を受けられるかどうかの分岐点になります。将来的にこの要件がどう確定するか注視する必要がありますが、労使コミュニケーションの基盤を今から整えておくことは、いずれにしても損にはなりません。
5-5. ポイント5:法改正のスケジュールを押さえ、段階的に対応する
・2026年4月時点での想定スケジュールは以下のとおりです。
・2026年夏ごろ: 成長戦略会議で対象拡大の具体案がまとまる見通し
・2026年秋〜冬: 労働政策審議会での本格的な制度設計の議論
・2027年通常国会: 労働基準法改正案の国会提出(目標)
・2027年〜2028年: 改正法の公布・施行(施行までに1〜2年の準備期間を設ける可能性あり)
ただし、労使の意見が大きく対立していることを考えると、スケジュールが後ろ倒しになる可能性も十分にあります。実務担当者としては、「確定情報」に飛びつくのではなく、「議論の方向性」を把握しておき、自社の状況に照らして準備を段階的に進めるのが現実的です。
第一生命経済研究所の岩井紳太郎氏も、裁量労働制見直しに関する論点整理レポートで「導入が進まない実態を直視し、制度の使い勝手の改善と健康確保措置の実効性強化を両立させることが課題」と指摘しています。
・今すぐ着手すべきこと: 自社の対象候補職種のリストアップ、現行の労使協定の総点検、勤怠管理システムの複数制度併用体制の確認
・法案が国会に提出された段階で着手すべきこと: 就業規則の改定案の準備、労使協定の改定交渉、対象職種の従業員への説明資料の作成
・施行日が確定した段階で着手すべきこと: 勤怠管理システムの設定変更、労使協定の締結・届出、対象労働者からの個別同意の取得
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 裁量労働制の対象拡大は、いつから施行されますか?
A.2026年4月時点では法案は未提出です。政府は2026年夏に成長戦略会議で具体案をまとめ、2027年の通常国会への法案提出を目指しています。施行は早くても2027年後半〜2028年と見られますが、労使の合意形成が難航すれば後ろ倒しになる可能性もあります。
Q2. 営業職はすべて裁量労働制の対象になるのですか?
A.すべての営業職が対象になるわけではありません。検討されているのは「ソリューション型の法人営業」----顧客の課題を分析し、自ら解決策を企画・提案する業務です。ルート営業や上司の指示に基づく定型的な営業活動は、対象外になる可能性が高いと考えられます。ただし、「提案型」と「定型型」の線引きが実務上あいまいになりやすい点は、制度設計上の大きな課題です。
Q3. 過半数労働組合がない企業は、対象拡大の恩恵を受けられないのですか?
A.政府案では過半数労働組合がある企業に限定する方向で検討されていますが、最終的な法案でこの条件がどう確定するかは未定です。仮にこの要件が採用された場合、過半数労働組合がない企業では拡大後の対象業務に裁量労働制を適用できません。ただし、現行の専門業務型20業務については、過半数代表者との労使協定で従来どおり適用可能です。
Q4. 裁量労働制の対象者にも残業代は発生しますか?
A.発生します。みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合、超過分について25%以上の割増賃金が必要です。さらに、深夜労働(22時〜翌5時)には25%以上、法定休日労働には35%以上の割増賃金を、実際の労働時間に基づいて支払う義務があります。「裁量労働制=残業代ゼロ」は明確な誤解です。
Q5. 2024年改正で導入された同意撤回の仕組みは、対象拡大後も適用されますか?
A.適用されます。2024年改正で義務化された本人同意・同意撤回の手続き、健康福祉確保措置、記録の保存義務は、拡大後の対象業務にも当然に適用されます。むしろ、対象拡大の議論では「2024年改正の枠組みをベースに、さらなる保護措置を追加すべき」との意見も出ています。
7. 「勤労の獅子」で裁量労働制の勤怠管理を整える
裁量労働制の対象者が増えれば、勤怠管理の「型」が社内で複数並走することになります。通常勤務、フレックス、変形労働、そして裁量労働----これらを一つのシステムで正確に管理できるかどうかが、制度運用の成否を分けます。
クラウド勤怠管理システム「勤労の獅子」は、拡張項目を作成することで柔軟な計算設計が可能であることが特長です。みなし労働時間と実労働時間の二重管理、深夜帯・休日の自動判定による割増賃金計算、健康福祉確保措置のモニタリングなど、裁量労働制に必要な管理項目を自社の労使協定に合わせて自由に構成できます。
オリジナルエラー設定を活用すれば、裁量労働制特有のチェックルール----たとえば「みなし労働時間と実労働時間の乖離が月20時間を超えたらアラート」「深夜業が月4回を超えたら管理者に通知」----を自動化できます。2024年改正で強化された健康福祉確保措置を、手作業ではなくシステムで担保する仕組みです。
「勤労の獅子」は、ホテル・医療・介護など複雑なシフト管理が必要な現場で培ったノウハウを持っています。専任の勤怠コンサルタントが要件定義から設定代行・運用提案まで一貫してサポートするため、裁量労働制の導入や設定変更も安心して任せられます。
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8. まとめ
裁量労働制の対象拡大は、まだ法案にすらなっていません。しかし、高市政権の施政方針演説で明確に方向性が示された以上、「そのうち考えればいい」では遅い。本記事のポイントを振り返ります。
・対象拡大には2つの方向性がある
専門業務型へのAI・データサイエンス職の追加と、企画業務型のソリューション営業への拡大。特に営業職への拡大は影響範囲が大きい。
・過半数労働組合の要件が分岐点
政府案では過半数労働組合がある企業に限定する方向。自社の労使関係の状況を今のうちに確認しておくべきです。
・2024年改正の枠組みが前提条件
本人同意と撤回手続き、健康福祉確保措置、記録の保存義務----これらが対象拡大後も適用される。現行制度の運用に不備がないかの点検が先決です。
・勤怠管理は「みなし」と「実態」の二重管理が必要
深夜労働と休日労働は実時間ベースで割増賃金が発生する。裁量労働制だからといって、労働時間を管理しなくてよいわけではない。
・段階的に準備を進める
今すぐやるべきは、対象候補職種のリストアップ、労使協定の総点検、勤怠管理システムの確認。法案の動向を待つのではなく、準備だけは先に進めておく。
裁量労働制の対象拡大が実現するかどうか、そしてどのような形で実現するかは、今後の労使の議論次第です。しかし、自社の勤怠管理体制を見直し、制度変更に柔軟に対応できる基盤を整えておくことは、どんな結果になっても無駄にはなりません。
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