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計画年休とは?労使協定の結び方と働き方別の付与方法

「有休の取得率を上げたいが、現場に任せているとなかなか取ってくれない」「年5日の取得義務を毎年きちんと満たせているか自信がない」―そう感じている人事・労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
その答えのひとつが、計画年休(計画的付与)です。労使協定を結ぶことで、有休のうち5日を超える部分について、会社があらかじめ取得日を決めて休ませることができる仕組みです(労働基準法第39条第6項)。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、計画的付与制度がある企業は40.8%。有給休暇の取得率は66.9%と過去最高を更新しており、制度を使う会社と使わない会社で取得状況の差が開き始めています。
この記事では、計画年休の基本から、就業規則と労使協定の準備、年5日の取得義務との関係、一斉・交替制・個人別という3つの付与方式の選び方、そして繁忙期でも人が回る分散付与の設計まで、翌日の業務で手を動かせる粒度で整理します。
なお、年5日の取得義務そのもののルール(対象者・罰則・年次有給休暇管理簿の作り方)は、
別記事「【完全版】年5日有休取得義務 正しい管理ルールを解説」で解説しています。本記事は「計画年休を年5日の義務にどう組み込むか」に的を絞ります。
目次
1. 計画年休とは?―会社が有休の取得日を決められる制度
2. 導入に必要な「就業規則」と「労使協定」―届出は不要
3. 年5日の取得義務との関係―計画年休は「5日」にカウントできる
4. 3つの付与方式―一斉・交替制・個人別
5. 繁忙期を止めない「分散付与」の設計
6. 計画年休でつまずきやすいポイント
7.よくある質問(Q&A)
8. 「勤労の獅子」でできること
9. まとめ
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1. 計画年休とは?―会社が有休の取得日を決められる制度
計画年休(計画的付与)とは、労使協定で定めることにより、従業員が持つ年次有給休暇のうち5日を超える部分について、会社が取得日をあらかじめ指定して休ませることができる制度です。労働基準法第39条第6項に根拠があります。
有休は本来、労働者が「いつ取るか」を自由に決められるものです。計画年休は、その一部を労使の合意で会社側が指定できるようにする例外的な仕組み―といえます。個人任せでは取得が進みにくい有休に、確実に休む日を作れるのが最大の狙いです。
1-1. 対象になるのは「5日を超える部分」だけ
計画年休の対象にできるのは、有休のうち5日を超える部分に限られます。5日ぶんは、労働者が体調不良や急な用事などに自分の判断で使えるよう、必ず本人の自由取得のために残しておく必要があります。
たとえば有休を10日持つ人なら計画年休にできるのは5日まで、前年からの繰越を含めて20日持つ人なら15日までです。
| 本人が保有する有休 | 計画年休にできる上限 | 本人が自由にとれる分 |
| 10日 | 5日 | 5日 |
|---|---|---|
| 15日 | 10日 | 5日 |
| 20日(繰越含む) | 15日 | 5日 |
1-2. 導入する会社が増えている理由
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、計画的付与制度がある企業は40.8%(前年の令和6年調査は40.1%)。付与日数の内訳は「5〜6日」が最も多く、7割前後を占めます。
背景にあるのは、2019年4月から始まった年5日の取得義務です。個人の申請に任せていると5日に届かない従業員が出てしまう会社ほど、計画年休であらかじめ休む日を組み込む運用に切り替えています。取得率が66.9%まで上がってきたのは、こうした制度面の後押しが効いている面があります。
2. 導入に必要な「就業規則」と「労使協定」―届出は不要

計画年休を導入するには、就業規則に根拠を定めたうえで、労使協定を結ぶ必要があります。この労使協定は、36協定や1年単位の変形労働時間制の協定と違って、労働基準監督署への届出は不要です。
2-1. 就業規則には「根拠となる1条」を置く
常時10人以上の従業員がいる事業場は、有休の計画的付与について就業規則に定めておく必要があります(労働基準法第89条)。条文としては、次のような1条を置けば足ります。
| 第○条(年次有給休暇の計画的付与) 会社は、労働者代表との書面による協定を締結したときは、その協定の定めるところにより、各人が有する年次有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して計画的に取得させることがある。 具体的な取得日や決め方までは就業規則に書き込まず、「労使協定の定めによる」としておくのが実務的です。毎年の日程は協定側で更新するほうが手直しが少なくて済みます。 |
2-2. 労使協定を結ぶ(届出は不要)
労使協定は、事業場の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者との間で、書面で締結します。前述のとおり届出は不要ですが、締結の事実と内容は社内に周知し、原本を保管しておきます。
以下は、事業場全体を同じ日に休ませる一斉付与方式の労使協定のひな形です。自社で最も使われる代表的な形なので、まずはこの1本を軸に整えると迷いません。
【モデル条文】年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定(一斉付与方式)
|
株式会社○○(以下「会社」という)と従業員代表△△は、年次有給休暇の計画的付与に関し、次のとおり協定する。 第1条(対象者) 本協定は、○年○月○日時点で在籍する全従業員に適用する。ただし、その日において年次有給休暇の残日数が5日以下の者を除く。 第2条(計画的に付与する日数) 各人が有する年次有給休暇のうち、5日を超える部分について、本協定により計画的に付与する。 第3条(付与する日) 計画的に付与する年次有給休暇は、次の日とする。 ○年8月13日、8月14日、8月15日(合計3日) 第4条(休暇日数が足りない者の取扱い) 付与日において計画的に付与する年次有給休暇の日数が不足する者については、その不足する日数の限度で特別有給休暇を与える。 第5条(有効期間) 本協定の有効期間は、○年○月○日から1年間とする。 ○年○月○日 第4条は見落としがちな要注意ポイントです。入社間もない人など、付与日に充てる有休が足りない従業員をどう扱うか(特別休暇を与える、付与日数を減らすなど)を決めておかないと、その日を欠勤扱いにされて賃金トラブルにつながります。 |
2-3. 協定に盛り込む項目
方式を問わず、労使協定には次の項目を入れておきます。
・対象者の範囲(有休残が5日以下の人をどう扱うか)
・計画的に付与する日数
・具体的な付与日、または付与日の決め方
・有休が足りない人への手当て(特別休暇の付与など)
・協定の有効期間
3. 年5日の取得義務との関係―計画年休は「5日」にカウントできる
計画年休として取得させた日数は、年5日の取得義務にそのまま充当できます。5日ぶんを計画年休で押さえておけば、会社が別途「この日に休んで」と時季を指定する必要は原則なくなります。ここが計画年休を導入する実務上の大きなメリットです。
3-1. 39条7項と8項の仕組み
年5日の取得義務は、有休が10日以上付与される全労働者(管理監督者を含む)を対象に、使用者が本人の意見を聴いたうえで時季を指定して取得させる義務です(労働基準法第39条第7項)。
そして第39条第8項は、労働者が自分で請求して取得した日数と、計画年休で取得させた日数は、その分を年5日から差し引くと定めています。つまり計画年休で3日休ませれば、残る義務は2日。5日休ませれば、時季指定の義務は果たされたことになります。
3-2. 充当の考え方(具体例)
基準日に有休を14日持つ従業員を例にとります。会社が一斉付与で夏に3日、冬に2日、合計5日を計画年休として取得させたとします。
・計画年休で取得させた5日 → 年5日の取得義務にそのまま充当
・会社による時季指定(39条7項) → 原則不要になる
・残りの9日 → 従業員が自分の判断で自由に取得
計画年休を5日確保しておけば、義務対応を年度末に慌ててやらずに済みます。日程を先に固定できるので、シフトや業務の調整もしやすくなります。
※対象者の判定(10日以上か)、罰則(30万円以下の罰金)、年次有給休暇管理簿の記載事項といった年5日義務そのものの詳細は、別記事「年5日の有給休暇取得義務とは」で扱っています。
4. 3つの付与方式―一斉・交替制・個人別
計画年休の付与方式は大きく3つあります。事業所全体で同じ日に休む「一斉付与」、班やグループごとに休む日をずらす「交替制」、従業員ごとに計画表で決める「個人別」です。職場の稼働形態に合わせて選びます。
| 方式 | 向いている職場 | 休ませ方 |
| 一斉付与 | 製造・事務など全員で止められる職場 | 全社・事業所を同じ日に休業 |
|---|---|---|
| 交替制 | 小売・飲食・ホテルなどシフト制 | 班ごとに休む日をずらす |
| 個人別 | 個々に業務が独立している職場 | 従業員ごとに計画表で日を決める |
4-1. 労使協定はどこが変わるか
3つの方式で協定の骨格は同じですが、「付与する日をどう書くか」が変わります。先ほどの一斉付与のひな形をベースに、変わる部分だけを押さえれば十分です。方式ごとに条文を丸ごと作り直す必要はありません。
一斉付与は、前掲のひな形のように協定へ具体的な月日(8月13〜15日など)を直接書きます。
交替制は、日付そのものではなく班の分け方と、班ごとの付与日の決め方・時期を協定に書きます。各班が実際にいつ休むかは、別途つくる班別の計画表で示します。「A班は8月前半、B班は8月後半」といった枠組みを協定で定めておくイメージです。
個人別は、協定に個人別の年休付与計画表を、基準日の一定期間前までに作成するという決め方を書きます。一人ひとりの具体的な取得日は協定には書かず、計画表側に落とします。
| 方式 | 協定に書く内容 | 別途必要になるもの |
| 一斉付与 | 具体的な付与日(月日) | (協定のみで完結) |
|---|---|---|
| 交替制 | 班の分け方・付与日の決め方と時期 | 班別の付与計画表 |
| 個人別 | 個人別計画表を作る旨と作成期限 | 個人別の付与計画表 |
5. 繁忙期を止めない「分散付与」の設計
24時間稼働やシフト制の職場では、一斉付与だと現場が止まってしまいます。交替制や個人別を使い、繁忙期を避けて休みを分散させるのが基本です。ここは計画年休を実際に回せるかどうかの分かれ目になります。
5-1. 分散付与の設計手順
- 繁忙期と閑散期を月ごとに洗い出す。過去1年の稼働実績があると精度が上がります。
- 各時期に最低限必要な人員を割り出す。「この日は何人いれば回るか」を数字で把握します。
- 班分けと付与日の候補を作る。閑散期に厚めに、繁忙期は薄めに休みを置きます。
- 労使協定と付与計画表に落とし込む。交替制なら班別、個人別なら個人別に日を確定します。
- 運用後、前年の実績と照らして翌年の協定を見直す。1年ごとの更新に合わせて精度を上げます。
5-2. シフト制で気をつけること
注意したいのは、所定休日(公休)に計画年休を重ねられない点です。有休はもともと労働日に取得するものなので、休日に有休を付与することはできません。公休を有休に振り替えて取得日数を水増しするような運用は認められません。
シフトを組む段階から「この日は労働日として計画年休を充てる」と整理しておくと、あとで矛盾が出にくくなります。
6. 計画年休でつまずきやすいポイント

6-1. 計画年休の日は、あとから変更できない
いったん労使協定で計画的付与日が決まると、その日については使用者の時季変更権も、労働者本人からの変更の申し出も、原則として認められません。計画年休は労使双方を拘束するからです。
時季変更権は本来、労働者が指定した有休日を「事業の正常な運営を妨げる場合に」使用者が別の日へ動かせる権利です。しかし計画年休の日は労使協定で確定しているため、この権利は及びません。「繁忙期になったから計画年休の日をずらしたい」は通りません。日程を最初の設計の段階で無理のない配置にしておくと、あとで動かせずに困る事態を避けられます。
6-2. 有休が足りない人・入社間もない人の扱い
計画的付与の対象になるのは5日を超える部分だけなので、有休が5日以下しかない新入社員などは、そのままでは付与日に充てる有休がありません。前掲の労使協定第4条のように、不足分は特別有給休暇を与える、またはその人の付与日数を減らすといった取り決めを協定に入れておきます。
取り決めがないまま一斉休業日に休ませると、有休の足りない人を欠勤扱いにするか、賃金を支払わないかの判断で現場が混乱します。
6-3. 個人別方式は「年5日未達」に注意
個人別方式は柔軟な反面、全員ぶんの計画表を作り切らないと取得漏れが出ます。基準日が人によってバラバラな会社では特に、誰がいつまでに何日取ればよいかが見えにくくなります。年次有給休暇管理簿で基準日ごとの取得状況を追い、5日に届きそうにない人を早めに拾う運用がセットで必要です。
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 計画年休の労使協定は、労働基準監督署に届け出る必要がありますか?
A. 届出は不要です。36協定や1年単位の変形労働時間制の協定とは異なり、計画年休の労使協定は締結すれば効力を持ちます。ただし常時10人以上の事業場では、就業規則に計画的付与の根拠規定を定め、就業規則自体は労基署へ届け出る必要があります。
Q2. 計画年休で決めた日を、あとから従業員の希望で変更できますか?
A. 原則としてできません。労使協定で定めた計画的付与日は労使双方を拘束するため、使用者の時季変更権も、労働者個人からの変更の申し出も認められないのが原則です。日程はあらかじめ無理のない配置にしておくことが重要です。
Q3. 有休が5日しかない従業員も計画年休の対象にできますか?
A. 計画的付与にできるのは5日を超える部分だけなので、有休が5日以下の人には対象にできる日数がありません。入社間もない従業員などがこれに該当します。労使協定で、不足分に特別有給休暇を与えるなどの取り決めを設けておきます。
Q4. 計画年休は年5日の取得義務にカウントできますか?
A. カウントできます。労働基準法第39条第8項により、計画年休で取得させた日数は年5日の取得義務から控除されます。計画年休で5日取得させれば、使用者による時季指定は原則不要になります。
Q5. パートやアルバイトも計画年休の対象になりますか?
A. 有休が付与されている人であれば、雇用形態を問わず対象になります。ただし比例付与で有休日数が少ない人は、5日を超える部分がなく対象日数が生じない場合があります。個々の残日数を確認して対象を判定します。
8. 「勤労の獅子」でできること
計画年休をうまく回すには、「誰が有休を何日持っていて、計画年休を差し引くと年5日に届くか」を一人ひとり把握し、シフト上の人員も同時に確認できることが欠かせません。
クラウド勤怠管理システム「勤労の獅子」では、有休の付与日数・残数・取得状況を基準日ごとに管理でき、年5日の取得状況もチェックできます。
システム導入の設定や運用の設計は専任のコンサルタントが代行するため、複雑なシフト制の職場でも導入時の負担を抑えられます。
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9. まとめ
・計画年休(計画的付与)は、労使協定で有休のうち5日を超える部分の取得日を会社が指定できる制度(労働基準法第39条第6項)。
・導入には就業規則の根拠規定と労使協定が必要。労使協定の届出は不要。
・計画年休で取得させた日数は年5日の取得義務に充当できる(第39条第8項)。5日確保すれば時季指定は原則不要。
・付与方式は一斉・交替制・個人別の3つ。協定で変わるのは「付与日の書き方」で、方式ごとに条文を作り直す必要はない。
・シフト制職場は交替制・個人別で分散付与を設計する。計画的付与日はあとから変更できないため、最初の配置設計で無理のない日程にしておくと運用でつまずきにくい。
まずは自社の稼働形態に合う付与方式を選び、一斉付与のひな形をベースに労使協定を1本作るところから始めるのが現実的です。
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