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2024.05.08コラム

1年単位の変形労働時間制とは?1か月単位の変形労働制との違いを比較

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1年単位の変形労働時間制は、年間を通して繁閑差がある業界・業種について労働時間を調整することで、労働時間の短縮を図り、残業時間を削減することに役立ちます。
1か月単位の変形労働時間制と比較を行いながら1年単位の変形労働時間制の制度を解説します。

目次

1.1年単位の変形労働時間制とは?
2.1年単位の変形労働時間制の導入手続き
3.1か月単位の変形労働時間制との違い
4.残業時間の算定方法
5.中途入社・退職者の取り扱い
6.勤労の獅子では変形労働時間制が正しく管理できます
7.まとめ

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文言の説明
・法定労働時間:労働基準法で定められた労働時間
・所定労働時間:会社が契約等で定めた労働時間

関連記事:1ヶ月単位の変形労働時間制|正しく理解できていますか?

1.1年単位の変形労働時間制とは?

1年単位の変形労働時間制とは、変形労働時間制の中でも1か月超1年以内の期間で変形労働を行う制度のことです。1か月よりも長い期間の設定をすることが可能であるため、長い期間で業務の繁閑が大きい業界・業種について導入するメリットがあります。
繁忙期の所定労働時間を長くし、閑散期は所定労働時間を短くするなど、柔軟に労働時間を定めることが可能となります。
例えば、1月~3月が特に忙しい業種において、その期間の所定労働時間を10時間に設定し、他の期間の所定労働時間を7時間などに設定するということが可能となります。
期間内の平均週所定労働時間を40時間以内に収めることが条件であり、条件を満たす場合に特定の日・週に1日8時間、週40時間を超過することが可能となります。

2.1年単位の変形労働時間制の導入手続き

1年単位の変形労働時間制は、1か月単位の変形労働時間制と異なり就業規則のみで採用することができません。
導入する場合は、労使協定で以下の5つの項目について定める必要があります。この労使協定は所轄労働基準監督署長へ届け出る必要があります。

①対象労働者の範囲
➁対象期間と起算日
③特定期間
④労働日と労働日ごとの労働時間(特例あり)
⑤労使協定の有効期間

1.対象労働者の範囲

対象労働者の範囲に法令上の制限はありません。適用する範囲を全従業員、部署単位等で制限することが可能です。
しかし対象労働者の範囲は明確に定める必要があります。
また、勤務した期間が対象期間に満たない途中採用者、途中退職者などについても賃金の清算を条件に変形労働時間制を採用することができます。

2.対象期間と起算日

対象期間は、その期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲において労働させる期間です。
対象期間の範囲は1か月を超えて1年以内であるため、対象期間が1年以内であれば3か月、半年などの対象期間を設定することが可能です。
起算日については、給与の締め日に合わせると給与計算が行いやすくなります。
例えば、給与の締め日が15日であれば、16日を起算日として対象期間を16日~翌年15日とすることが可能です。

3.特定期間

特定期間とは、対象期間のうち、特に業務が繁忙であると定めた期間を指します。例えば、対象期間を4月から翌年3月までの1年間とし、そのうち特定期間を繁忙月である6月から9月に設定するということになります。
対象期間の多くの部分を特定期間とすることはできません。判例では、対象期間1年のうち特定期間を10か月とすることは認められないと判断されています。
特定期間は必ず設定しなければならないものではないですが、特定期間を定めることによって特定期間中の連続勤務日数の上限を対象期間より引き上げることができます。
対象期間の連続勤務は6日が上限ですが、特定期間の連続勤務は12日が上限となります。

週の労働日数上限.png

4.労働日と労働日ごとの労働時間(特例あり)

対象期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない時間にする必要があります。
対象期間が1年であれば全対象期間の労働日を設定することが原則ですが、業務の繁閑の予測が難しく、1年分の労働日をあらかじめ設定することが難しい場合は1か月以上の期間に分割して設定することができます。

1か月以上の期間で分割して労働日を設定する場合は、最初の1か月の労働日および各労働日ごとの労働時間、2か月目以降の各期間の労働日数および労働時間を定めて労使協定を締結して届け出る必要があります。
また上記の期間で分割する場合、最初の期間についてのみ出勤日と所定労働時間を定め、2か月目以降については、労働日数とその期間の総労働時間を決めておけば良いことになっています。
2か月目以降については、その期間の初日の少なくとも30日前に労使協定で定めた労働日数と総労働時間の範囲内で書面によって作成する必要があります。

4‐1.労働日数の上限

対象期間が3か月を超える場合の労働日数の上限は原則1年間280日です。3か月超1年未満の場合は、280日×(対象期間の暦日数÷365)で計算した日数が上限となります。3か月未満の場合は上限の制限がありません。
労働日数上限.png

4‐2.労働時間の上限

労働時間の上限を設定する際、対象期間を平均して1週間の労働時間を40時間以内に設定する必要があります。これは1週44時間の特例事業であっても40時間以内に設定しなければなりません。
1年単位の変形労働時間制では、1日・1週などの単位で労働時間/日数の上限が定めされています。
労働時間/日数の上限.png
※ 3か月ごとの区切りは「対象期間の初日から区切った各3か月」です

また、対象期間の総労働時間の上限(法定労働時間の総枠)は以下の計算式で求められます。1年単位の変形_法定労働時間の総枠.png

計算式をもとに算出した法定労働時間の総枠は以下の通りとなります。1年単位の変形労働時間制_法定労働時間の総枠.png

5.労使協定の有効期間

対象期間より長い期間を設定する必要がありますが、対象期間と同じ期間を設定して、その都度労使協定を再締結するのが一般的です。

3.1か月単位の変形労働時間制との違い

1か月単位の変形労働時間制との違いを以下の表にまとめました。

1か月単位と1年単位の違い (2).png
※ 一定の隔日勤務のタクシー運転手(バス、長距離トラックは不可)に限り、1日16時間まで可能

1.労働日数の上限

1年単位の変形労働時間制では、対象期間の長さに応じて労働日の上限日数が制限されています。
1か月単位の場合も労働日数の上限が制限されていますが、上限日数が異なります。1か月単位の場合、1年間の労働日数の上限は313日です。

2.連続労働日の上限と特定期間

1年単位の変形労働時間制では、連続労働日数の上限が原則6日とされています。しかし対象期間のうち特に繁忙であると設定された特定期間については、例外として最長12日まで連続勤務が可能となります。
1か月単位では、連続労働日数の上限が定められていません。

3.1日の労働時間は10時間まで

1年単位の変形労働時間制の場合、1日あたりの労働時間は10時間が上限とされています。(隔日勤務のタクシー運転手は16時間まで可能です。)
1か月単位では1日あたりの労働時間の上限はありません。

4.1週の労働時間は52時間まで

1年単位の変形労働時間制のでは、1週あたりの労働時間は52時間が上限とされています。
ただし対象期間が3か月を超える場合は、以下の通りに設定する必要があります。
1週の労働時間上限.png
1ヶ月単位では、1週あたりの労働時間の上限はありません。

    関連記事:1ヶ月単位の変形労働時間制|正しく理解できていますか?

    4.残業時間の算定方法

    残業時間の算定を行うには、日単位→週単位→対象期間の順番に計算を行い、合計時間数が残業時間の時間数となります。

    日単位の残業時間

    ①1日の所定労働時間が8時間超である場合
    あらかじめ定めた所定労働時間を超えた時間について残業時間となります。
    例えば、1日の所定労働時間を9時間と定めている場合は、9時間を超えて労働した部分について残業時間となります。

    ②1日の所定労働時間が8時間未満の場合
    8時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
    例えば、1日の所定労働時間を7時間としている場合には、8時間を超えて労働した部分について残業時間となります。

    週単位の残業時間

    ①1週の所定労働時間が40時間超である場合
    あらかじめ定めた所定労働時間を超えた時間について残業時間となります。
    例えば、週所定労働時間が42時間と定めている場合、42時間を超えて労働した部分について残業時間となります。

    ②1週の所定労働時間が40時間未満の場合
    週40時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
    例えば、週所定労働時間が38時間と定めている場合、40時間を超えて労働した部分について残業時間となります。
    週の残業時間を計算する際に、日単位で発生した残業時間は除いて計算します。
    例えば、週所定労働時間が38時間の週に44時間労働した場合、
       44時間-40時間=4時間
    その中に日単位で残業時間となる時間が2時間ある場合は、
       4時間-2時間=2時間

    対象期間の残業時間

    対象期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を計算します。
    日単位、週単位で発生した残業時間は除いて計算します。
    例えば、対象期間が1年単位の場合、法定労働時間の総枠が2085時間42分の年に2100時間労働した場合、
       2085時間42分-2200時間=114時間18分
    その中に日単位+週単位で残業時間となる時間が100時間ある場合は、
       114時間18分-100時間=14時間18分

    5.中途入社・退職者の取り扱い

    中途入社や退社の場合は、在籍した期間中の法定労働時間の総枠と実働労時間を比較して残業時間を算出します。

    中途入社・退職者.png

    Aさんは、総労働時間(実際に働いた時間数)=法定労働時間の総枠となっているため残業時間の発生がありません。
    Bさんは、総労働時間-法定労働時間の総枠=15.5時間のため、残業時間が発生します。
    1月から5月までの間に1日・1週の残業時間がある場合は、15.5時間からマイナスします。例えば、1日・1週の残業時間が5時間あった場合、15.5時間-5時間=10時間分が退職時に支払う必要のある残業分となります。

    6.勤労の獅子では1年単位の変形労働時間制が正しく管理できます

    「勤労の獅子」では1年単位の変形労働時間制を正しく管理することができます。
    日単位、週単位、対象期間の3つの期間のチェックをシステム上で計算を行うことが可能です。
    導入・サポート担当者がヒアリングを行い運用に合わせた設定を行います。
    以下は勤労の獅子の勤怠管理画面です。日単位、週単位、変形期間で時間外労働の計算を行います。

    変形労働管理画面.png

    勤労の獅子では1か月単位の変形労働時間制も管理することが可能です。

    7.まとめ

    1年単位の変形労働時間制は、企業としては残業代を削減できることがメリットですが、1か月単位と比較して細かな条件が多く管理が煩雑です。導入をする際は、現在の運用の状況を確認して、実際に自社での運用が可能であるか、また導入するメリットがあるかを考慮して検討を進めましょう。

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