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過重労働の判断基準|厚生労働省のガイドラインを詳しく解説
過重労働は、従業員の健康を害するだけでなく、企業にとっても生産性の低下や法的リスクを引き起こす重大な問題です。厚生労働省のガイドラインでは、時間外労働の上限や過労死ラインなど、企業が遵守すべき基準が定められています。しかし、単に労働時間を制限するだけでは、根本的な解決にはなりません。
本記事では、過重労働の判断基準や健康リスク、そして企業が取り組むべき防止策と活用できる制度について詳しく解説します。労働環境の見直しを検討している企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.過重労働の判断基準とは|厚生労働省のガイドラインと企業の対策
厚生労働省の定める基準
過重労働の判断基準|労働時間・ストレス環境のリスクを解説
2.過重労働の健康リスクと対策
過重労働の健康リスク|心臓疾患・メンタル不調の危険性
過重労働を防ぐための企業の取り組み
過重労働対策に活用できる制度
3.勤労の獅子で実現する。勤怠管理をもっと簡単に。もっと正確に。
4.まとめ
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1.過重労働の判断基準とは|厚生労働省のガイドラインと企業の対策
厚生労働省の定める基準
過重労働の判断基準は、厚生労働省が定めるガイドラインによって示されています。これは、労働者の健康を守るために企業が遵守すべき目安となるものです。具体的には、時間外労働の上限や、健康リスクが高まる労働時間の基準が定められています。
厚生労働省のガイドラインでは、時間外労働の上限を『月45時間、年360時間』と定め、健康被害のリスクを抑えることを推奨しています。ただし、臨時的な業務の繁忙期などで特別な事情がある場合には、一時的にこれを超えることが認められています。それでも、月100時間未満、複数月平均80時間以内という制限があり、これを超える長時間労働は健康リスクが極めて高いと判断されます。
また、労働基準監督署による「過労死ライン」の指標も重要となります。過労死や健康障害のリスクが高まる目安として、時間外労働が月80時間を超えた場合は、特に注意が必要とされています。これは、脳・心臓疾患などの健康被害が発生する可能性が高くなるためです。
このような基準を満たしていない企業には、行政指導や是正勧告が行われることがあります。また、過労による労災認定においても、これらの時間基準が重要な判断要素となるため、企業は適切な労働時間管理を徹底する必要があります。
企業が基準を遵守しない場合、法的責任が問われる可能性があるだけでなく、従業員の健康被害やモチベーションの低下にもつながります。そのため、労働時間の管理体制を整え、適切な働き方改革を推進することが求められています。
令和5年に長時間労働が疑われる事業場に対して監督指導の結果が以下となります。
参考:長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果
過重労働の判断基準|労働時間・ストレス環境のリスクを解説
過重労働と判断される基準は、単に労働時間の長さだけで決まるわけではありません。業務の内容、勤務環境、労働強度などの要素が総合的に考慮されます。特に、長時間労働が続く場合や、精神的・肉体的負担が極めて大きい業務は、過重労働とみなされる可能性が高まります。
具体的なケースとして、以下のような状況が挙げられます。
・長時間労働が常態化している場合
例えば、1か月の時間外労働が80時間を超える場合は、健康被害のリスクが極めて高いとされ、労災認定の判断基準ともなります。また、月100時間近い時間外労働が発生した場合は、企業に対して行政指導が入る可能性があります。
・休日出勤が続き、十分な休息が取れない場合
法律では週1日の休息が必要とされていますが、業務の繁忙期などで連日の勤務が続くと、精神的・肉体的な負担が大きくなります。特に、休日がほとんど取れない状態が長期間続くと、健康リスクが一層高まります。
・高い精神的ストレスが伴う業務を担当している場合
クレーム対応や納期の厳しいプロジェクトの管理など、精神的な負担が大きい業務を長期間担当する場合も、過重労働とみなされることがあります。特に、心理的負担によるうつ病や適応障害が発生した場合、労災認定される可能性があります。
・夜勤や交代勤務が長期間続いている場合
深夜帯の労働は、体内リズムを崩しやすく、健康への影響が大きいとされています。特に、長時間の夜勤が連続する場合や、昼夜が逆転する交代勤務が頻繁にある場合は、過重労働と判断されることがあります。
これらのケースに該当する労働環境では、従業員の健康を守るためにも、労働時間の適正な管理と業務負担の調整が不可欠です。企業は、法令に基づいた労働環境の整備を進めることで、過重労働を未然に防ぐことが求められます。
2.過重労働の健康リスクと対策
過重労働の健康リスク|心臓疾患・メンタル不調の危険性
過重労働が続くと、身体的・精神的な健康被害が発生するリスクが高まります。厚生労働省も、長時間労働や高ストレス環境が健康に与える影響について警鐘を鳴らしています。特に、脳・心臓疾患、精神疾患、生活習慣病の悪化などが代表的なリスクとして挙げられます。
①身体への影響
長時間労働が続くことで、血圧の上昇や動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるとされています。例えば、月80時間以上の時間外労働が続くと、過労死ラインを超えることになり、健康障害の危険性が著しく上昇します。また、睡眠不足が慢性化すると免疫力が低下し、風邪や感染症にもかかりやすくなることが指摘されています。
②精神面への影響
精神的な負担が大きい業務や長時間労働が続くと、強いストレスや不安を感じることが増えます。特に、休日が取れない状況が続くと、心身のリフレッシュができず、うつ病や適応障害のリスクが高まる可能性があります。実際、過労によるメンタルヘルス不調で休職や退職に追い込まれるケースも少なくありません。
③生活習慣の乱れ
長時間労働により、食事の時間が不規則になったり、運動不足に陥ったりすることも問題です。特に、夜遅くの食事やコンビニ弁当などに頼る生活が続くと、高血圧や糖尿病などの生活習慣病につながる可能性があります。また、慢性的な疲労やストレスが原因で、アルコールやカフェインの過剰摂取につながることもあります。
このように、過重労働は単なる疲労にとどまらず、命に関わる健康リスクを引き起こす可能性があります。企業は、従業員の健康を守るために、労働時間の管理や適切な休息の確保を徹底する必要があります。また、従業員自身も定期的な健康診断やストレスチェックを活用し、早期に異変に気づくことが重要です。
過重労働を防ぐための企業の取り組み
企業が取り組む過重労働防止の対策として図のようなものがおこなわれています。
参考:過労死等に関する実態把握のための調査研究事業
企業が過重労働を防ぐためには、労働時間の適正管理と職場環境の改善が不可欠です。単に残業時間を制限するだけではなく、業務効率の向上や働き方改革を進めることが求められます。ここでは、具体的な取り組みを紹介します。
①労働時間の管理強化
企業がまず取り組むべきなのは、客観的な労働時間の把握です。具体的には、勤怠管理システムの導入やICカードによる入退室管理を活用し、正確な労働時間を記録することが重要です。これにより、サービス残業の抑制や、長時間労働が常態化している部署の特定が可能になります。
また、時間外労働の上限を設定し、長時間労働が続く従業員には早期のアラートを発する仕組みを整えることも有効です。特に、月80時間以上の残業が発生する場合は、管理職が状況を確認し、業務負担の調整を行うことが求められます。
②業務の効率化と分担
過重労働の原因の一つに、一部の社員に業務が集中していることが挙げられます。この問題を解決するためには、業務の可視化を行い、チーム内での業務分担を最適化することが必要です。例えば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、単純作業を自動化することで、従業員の負担を軽減できます。
また、業務の優先順位を明確にし、「やらなくてもよい業務」を見直すことも重要です。会議の時間を短縮したり、業務フローを整理したりすることで、必要以上の労働時間を減らすことができます。
③柔軟な働き方の導入
労働時間の適正化には、テレワークやフレックスタイム制の導入も効果的です。通勤時間の短縮や、業務時間の柔軟な調整が可能になることで、従業員が効率的に働ける環境が整います。また、在宅勤務を取り入れることで、長時間労働を防ぐことにもつながります。
さらに、ノー残業デーの設定や、有給休暇の取得推進なども、過重労働の抑制に有効です。管理職が率先して休暇を取得することで、職場全体に「休みやすい雰囲気」を作ることができます。
④メンタルヘルス対策と相談窓口の設置
過重労働による健康被害を防ぐためには、メンタルヘルスのケアも欠かせません。企業は、定期的にストレスチェックを実施し、従業員の心理的負担を把握することが重要です。さらに、産業医やカウンセラーと連携し、いつでも相談できる環境を整えることが求められます。
また、パワーハラスメントや業務の過度なプレッシャーが原因で長時間労働が発生していないかを定期的に確認することも必要です。こうした問題が発覚した場合は、速やかに改善措置を講じることで、従業員の負担を軽減できます。
このように、過重労働を防ぐためには、単なる労働時間の削減だけでなく、業務の効率化、柔軟な働き方の導入、メンタルヘルスのサポートを総合的に進めることが重要です。企業が積極的に対策を講じることで、従業員の健康を守りながら、生産性の向上にもつなげることができます。
過重労働防止対策に活用できる制度
過重労働を防ぐためには、企業の自主的な取り組みだけでなく、国や自治体が提供する制度を活用することも重要です。これらの制度を適切に利用することで、従業員の健康管理や労働環境の改善を図ることができます。
①働き方改革関連法の活用
2019年に施行された働き方改革関連法には、過重労働を防ぐための様々な規定が盛り込まれています。特に重要なのが、時間外労働の上限規制です。これにより、原則として時間外労働は月45時間、年間360時間と定められ、特例が認められる場合でも月100時間未満、複数月平均80時間以内に制限されています。企業は、これらの上限を超えないように、労働時間の管理を徹底することが求められます。
また、勤務間インターバル制度も注目されています。この制度を導入することで、終業から次の始業までに一定の休息時間を確保でき、従業員の健康を守ることが可能になります。導入企業には助成金が支給される場合もあるため、活用を検討する価値があります。
参考記事:勤務間インターバル制度とは?導入メリットと企業の対応ポイント
②産業医・ストレスチェック制度の活用
過重労働による健康被害を防ぐためには、産業医の助言を受けることが有効です。労働安全衛生法により、50人以上の労働者を雇用する企業には産業医の選任が義務付けられているため、産業医と連携しながら従業員の健康管理を進めることが重要です。
また、企業には年1回のストレスチェック実施が義務付けられています。ストレスチェックを行うことで、従業員のメンタルヘルスの状況を把握し、必要に応じて医師の面談を受けられるようになります。この制度を積極的に活用することで、過重労働による精神的負担の軽減につながります。
③36協定の適正な運用
時間外労働を行う場合、企業は労働組合または労働者の代表と36協定(さぶろくきょうてい)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。しかし、36協定を締結しているからといって無制限に残業させられるわけではないため、適正な運用が求められます。
具体的には、特別条項を適用する際には、事前に労働者と十分な協議を行い、業務の見直しや人員配置の調整を検討することが重要です。また、厚生労働省は「36協定届出の電子申請」を導入しており、企業の手続き負担を軽減しています。こうした制度を活用し、適正な労働環境の整備を進めることが求められます。
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4.まとめ
過重労働は、単に長時間労働を指すものではなく、業務の内容、労働環境、精神的負担なども考慮した総合的な判断が必要です。厚生労働省のガイドラインでは、時間外労働の上限(月45時間・年360時間)や過労死ライン(月80時間以上の残業)を基準に、企業が適切な労働時間管理を行うことが求められています。
過重労働によるリスクは、心疾患・脳疾患の発症リスクの増加、メンタルヘルス不調、生活習慣病の悪化など、多岐にわたります。これを防ぐためには、企業による労働時間の適正管理、業務の効率化、柔軟な働き方の導入、メンタルヘルス対策が不可欠です。
また、企業が過重労働を防止するためには、働き方改革関連法、ストレスチェック制度、36協定などを適切に運用しましょう。これらの制度を上手く活用し、従業員の健康を守りながら、持続可能な労働環境を整えることが企業にとっての重要な課題となります。
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