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2026.07.23コラム

宿直・当直は労働時間になる?労基署の許可基準・割増賃金・仮眠の判例を実務目線で解説

宿直・日直とは.png

病院や介護施設、ホテル、ビル管理、警備―「夜間はほとんど寝ているだけだから、当直手当を少し払えば十分」。そんな運用のまま、当直の時間を労働時間としてカウントすべきか迷ったまま続けている職場は珍しくありません。
宿直・日直は、労働基準監督署長の許可を受ければ、通常の労働時間規制からいったん外れます。ただし「許可を受けているつもり」だったり、実態が通常の業務に近かったりすると、後になって未払い残業代を請求される場面につながりやすい論点です。

本記事では、宿直と日直の違いから、許可の基準・手当と割増賃金の計算・仮眠時間の判例・医師の特例までを、翌日の当直シフト設計にそのまま使える形で整理します。




目次

1. 宿直・日直(当直)とは?「断続的労働」としての位置づけ
2. なぜ労基署の許可が必要か―労働基準法41条3号と適用除外の範囲
3. 宿日直許可の基準―何が「常態としてほとんど労働なし」か
4. 手当と割増賃金の計算―許可あり・なしで支払いはこう変わる
5. 仮眠・待機は労働時間か―大星ビル管理事件が示した判断基準
6. 医師・看護師の宿日直―令和元年通達と働き方改革の特例
7. 業種別の落とし穴と当直運用セルフチェック
8. 「勤労の獅子」でできること
よくある質問(Q&A)
まとめ



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1. 宿直・日直(当直)とは?「断続的労働」としての位置づけ

宿直・日直とは、本来の業務とは別に、定期的な巡回や緊急の電話・文書の受け取り、非常事態への備えなどを目的として、事業場に泊まり込み(宿直)または休日日中に待機(日直)する勤務をいいます。医療・介護の現場で使われる「当直」も、労働基準法上はこの宿直・日直として扱われます。
ポイントは、宿直・日直が「常態としてほとんど労働をする必要のない勤務」を指すという点です。つまり、待機している時間の大半は実作業がなく、たまに巡回や電話対応が発生する―この「断続的労働」の性質があるからこそ、後述する労働時間規制の適用除外が認められます。

宿直と日直は、時間帯で区別します。

区分 時間帯 主な内容
宿直 夜間(就業時刻後から翌朝まで) 泊まり込みでの待機・巡回・緊急対応
日直 休日の日中 休日の日中に事業場で待機・緊急対応

 一方で、夜勤(交替制勤務のひとつとしてフルに実作業を行う夜間労働)は宿直とは別物です。夜勤は通常の労働時間そのものであり、宿日直の許可の対象にはなりません。ここを取り違えると、実態は夜勤なのに「宿直だから」と手当だけで済ませてしまい、未払いが積み上がります。

2. なぜ労基署の許可が必要か―労働基準法41条3号と適用除外の範囲

宿直・日直で労働時間規制の適用除外を受ける根拠は、労働基準法41条3号です。同号は「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」について、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しないと定めています。宿日直勤務は、労働基準法施行規則23条に基づき、この許可を受けて行うものです。
重要なのは、適用除外の範囲が「労働時間・休憩・休日」に限られる点です。次の表のとおり、深夜割増賃金や年次有給休暇は適用除外になりません。

許可で適用除外になる 許可でも適用除外にならない
1日8時間・週40時間の上限(32条) 深夜割増賃金(37条4項・22時〜翌5時)
休憩(34条) 年次有給休暇(39条)
週1日・4週4日の休日(35条) 妊産婦・年少者の保護規定

「宿日直の許可を取れば、夜間の割増は一切払わなくていい」というのは誤解です。深夜帯に相当する時間については、許可の有無にかかわらず深夜割増(25%以上)の支払い義務が残ります。ここを曖昧にしたままだと、深夜割増の未払いという形でリスクが表面化しやすくなります。

3. 宿日直許可の基準―何が「常態としてほとんど労働なし」か

宿日直許可の申請.png

労基署長が許可を出す基準は、通達で「常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみ」と示されています。具体的には、定期的巡視、緊急の文書または電話の収受、非常事態に備えての待機などが対象です。逆に、通常の業務と同じ内容を宿直中に行っている場合は、許可の対象になりません。

3-1. 回数と手当の許可基準

許可にあたっては、勤務の回数と手当の下限もチェックされます。

  • ・回数の原則:宿直は週1回、日直は月1回まで。これを超える頻度は、原則として許可されません。
  • ・手当の下限:昭和63年3月14日基発150号により、宿直勤務1回あたりの宿直手当(深夜割増賃金を含む)または日直勤務1回あたりの日直手当の最低額は、その事業場で同種の労働者に支払われている賃金の「1人1日平均額の3分の1」を下回らないこと、とされています。

3-2. 申請の手続き(様式第10号)

宿日直の許可は、労働基準法施行規則23条に基づく様式第10号「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書」を、事業場を管轄する労働基準監督署に提出して申請します。申請書には、次のような項目を記入します。

  1. 宿直・日直それぞれの総員数と、1回あたりの従事人数
  2. 勤務の時刻(開始・終了)
  3. 一定期間における1人あたりの回数
  4. 1回あたりの手当額
  5. 勤務の態様(巡視の回数・時間、仮眠設備の有無など)

申請前に、実態が「ほとんど労働のない待機」になっているかを自社で点検しておくと、労基署とのやり取りがスムーズになります。

4. 手当と割増賃金の計算―許可あり・なしで支払いはこう変わる

宿日直で最も相談が多いのが、「結局いくら払えばいいのか」という計算です。許可の有無で扱いが大きく変わるため、2つのパターンで具体的に見ていきます。

4-1. パターン①:許可を受けている場合の手当の下限

同種の労働者の「1人1日平均額」が9,000円の事業場を例にします。

  • ・宿直手当の最低額 = 9,000円 × 1/3 = 3,000円(1回あたり/深夜割増分を含む)

この3,000円は「下限」であり、これを上回る手当を設定するのは自由です。注意したいのは、この金額に深夜割増分が含まれているという整理です。宿直中に実作業がほとんど発生しない限り、労働時間としての賃金計算は不要ですが、手当そのものが下限を割っていれば許可基準に反します。

4-2. パターン②:許可がない、または実態が通常業務の場合

許可がない状態で、あるいは許可を受けていても宿直中に通常業務と同じ作業をさせている場合、その時間は「労働時間」として扱われます。時給換算1,500円の従業員が、22時から翌7時まで9時間の当直に就き、うち実作業が断続的に発生していたケースで考えます。

  • ・労働時間(9時間)の賃金:1,500円 × 9時間 = 13,500円
  • ・うち深夜帯(22時〜翌5時=7時間)の深夜割増(25%):1,500円 × 0.25 × 7時間 = 2,625円
  • ・1日8時間を超える1時間分の時間外割増(25%):1,500円 × 0.25 × 1時間 = 375円
  • 1回あたりの支払い合計:13,500円 + 2,625円 + 375円 = 16,500円

パターン①の手当3,000円と比べると、1回あたり13,500円の差が生じます。当直が月4回、対象者10人なら、月間で13,500円 × 4回 × 10人 = 540万円。1年間さかのぼって請求されれば、その規模が未払い賃金として跳ね返ります。「許可を取っているか」「実態が待機か通常業務か」で、支払い額はここまで変わります。

なお、宿直明けにそのまま日勤へ入る「連続勤務」は、勤務間インターバルの観点でも見直しの対象になりやすいところです。

関連記事:勤務間インターバル義務化はいつから?11時間ルールの実務準備ガイド

5. 仮眠・待機は労働時間か―大星ビル管理事件が示した判断基準

「仮眠室で寝ているだけの時間まで労働時間になるのか」は、宿日直で最も争点になりやすいテーマです。ここで基準となるのが、大星ビル管理事件(最高裁 平成14年2月28日判決)です。

この事件では、ビル管理会社の従業員が毎月数回、24時間勤務に就き、その間に7〜9時間の仮眠時間が与えられていました。仮眠中は仮眠室で待機し、警報が鳴れば直ちに所定の作業を行うこととされていました。会社は、仮眠中に実作業がなかった場合、泊まり勤務手当を支給するだけで、時間外・深夜の手当を支払っていませんでした。

最高裁は、労働基準法上の労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいい、実作業のない仮眠時間が労働時間にあたるかどうかは、その時間に労働者が指揮命令下に置かれていたと客観的に評価できるかで決まる、と判断しました。そのうえで、警報対応などの義務があり、実作業の必要が皆無とはいえない仮眠時間は労働時間にあたるとしました。

実務への対応としては、仮眠中でも「呼ばれたらすぐ対応する義務」があるなら、たとえ実際にはほとんど眠れていたとしても、その待機は労働時間と評価されうる、ということです。宿日直の許可を取っていても、実態が「頻繁に対応が発生する待機」であれば、許可自体が実態に合っていないと判断される余地があります。

関連記事:「労働時間」に含まれるもの・含まれないものの違いとは?

6. 医師・看護師の宿日直―令和元年通達と働き方改革の特例

医師の宿日直.png

医療機関の当直は、宿日直許可の運用が特に問われる分野です。厚生労働省は令和元年7月1日付け基発0701第8号「医師、看護師等の宿日直許可基準について」で、医療現場に即した考え方を示しています。
この通達では、宿日直中に通常の勤務時間と同じ態様の業務に「稀に」従事することがあっても、一般的にみて常態としてほとんど労働することがない勤務であり、かつ宿直では夜間に十分な睡眠がとり得る限り、宿日直の許可を取り消す必要はないとしています。
ただし、その通常業務に従事した時間については、労働基準法33条または36条1項による時間外労働の手続きをとり、割増賃金を支払う扱いとすることが求められます。

背景には、2024年4月から始まった医師の働き方改革があります。勤務医の時間外・休日労働は原則として年960時間(A水準)が上限とされ、宿日直許可の有無が労働時間のカウントに直結するようになりました。許可を受けた宿日直の時間は原則として時間外労働の上限規制の枠外で扱える一方、実態が通常業務であれば労働時間として上限に算入されます。「許可の実態が伴っているか」を医療機関が自ら点検する必要性は、以前より高まっています。

7. 業種別の落とし穴と当直運用セルフチェック

宿日直の許可は、業種によって「引っかかりやすいポイント」が異なります。自社の当直がどのタイプに近いかを確認してください。

業種 当直の典型 注意したい落とし穴
病院・診療所 医師・看護師の当直 救急対応が多く、実態が通常業務に近づきやすい
介護・社会福祉施設 夜間の見守り・巡回 頻繁なコール対応で「待機」といえなくなる
ホテル・旅館 夜間フロント チェックイン・電話対応が続くと通常労働
ビル管理・設備 泊まり込みの監視・巡回 警報対応の待機義務(大星ビル管理事件型)
警備 施設常駐・仮眠を挟む警備 仮眠中の即応義務があると労働時間

当直運用セルフチェックリスト

次の項目に「いいえ」がある場合は、宿日直の運用を見直す余地があります。
☐ 宿直・日直について、労基署長の許可(様式第10号)を受けている
☐ 許可の内容(回数・時刻・人数・手当)と実際の運用が一致している
☐ 宿直中の実作業は「稀」で、大半は待機・仮眠になっている
☐ 宿直手当は「1人1日平均額の3分の1」以上を満たしている
☐ 深夜帯(22時〜翌5時)の割増賃金を、許可の有無と別に支払っている
☐ 宿直中に発生した実作業の時間を、客観的な記録で把握できている
☐ 宿直明けから次の勤務まで、十分な休息時間を確保している
☐ 「当直=夜勤(通常労働)」になっていないかを定期的に点検している

就業規則のモデル条文(例)

第○条(宿直及び日直)
1 会社は、業務上必要があるときは、労働基準監督署長の許可を受けたうえで、
  従業員に宿直または日直を命じることがある。
2 宿直・日直の勤務は、定期的巡視、緊急の文書・電話の収受、
  非常事態への待機を主たる内容とし、通常の業務は行わせない。
3 宿直・日直に対しては、1回につき別に定める宿直手当・日直手当を支給する。
4 宿直・日直中に通常の業務に従事した時間については、
  時間外労働または深夜労働として、別途割増賃金を支払う。

8. 「勤労の獅子」でできること

宿日直の運用でつまずく多くのケースは、「許可の内容と実態がずれていることに気づけない」ことから始まります。当直中の実作業がいつ・どれだけ発生したかを客観的な記録として残せていないと、いざ請求や監督署対応の場面で、実態を説明できません。
「勤労の獅子」は、当直・夜勤・仮眠を含む複雑な勤務パターンをシフトとして設計し、打刻や実作業の記録から労働時間を客観的に集計できます。深夜帯の自動判定、時間外の集計、36協定の上限に近づいたときのアラートまで、当直のある職場で見落としがちな管理を仕組みで支えます。設定や運用設計は専任の勤怠コンサルタントが伴走するため、「自社の当直をどう記録すればよいか」から相談できます。

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よくある質問(Q&A)

Q1. 宿直と当直は違うものですか?
「当直」は医療・介護などの現場でよく使われる呼び方で、労働基準法上は宿直・日直として扱われます。呼び方ではなく、勤務の実態(常態としてほとんど労働がないか)で判断されます。

Q2. 宿日直の許可を受ければ、夜間の割増賃金は一切不要になりますか?
いいえ。許可で適用除外になるのは労働時間・休憩・休日の規定です。深夜割増賃金(22時〜翌5時、25%以上)は許可の有無にかかわらず支払う必要があります。

Q3. 許可なしで宿直をさせるとどうなりますか?
その時間はすべて通常の労働時間として扱われ、時間外・深夜の割増賃金の支払い義務が生じます。過去にさかのぼって未払い賃金を請求されるリスクがあります。

Q4. 宿直は月に何回まで命じられますか?
許可基準では、宿直は原則として週1回、日直は月1回までとされています。これを超える頻度は原則として許可されません。

Q5. 仮眠時間はどんなときに労働時間になりますか?
大星ビル管理事件(最高裁 平成14年2月28日)の基準では、仮眠中でも警報対応などの即応義務があり、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できる場合は労働時間になります。

まとめ

  • 宿直・日直(当直)は、労基署長の許可(労基法41条3号・施行規則23条・様式第10号)を受けて初めて、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外になる。
  • ・深夜割増賃金と年次有給休暇は、許可を受けても適用除外にならない。夜間の割増は別途支払う。
  • ・許可基準は「常態としてほとんど労働なし」。回数は宿直週1回・日直月1回、手当は1人1日平均額の3分の1以上(昭和63年基発150号)。
  • ・仮眠・待機でも即応義務があれば労働時間になりうる(大星ビル管理事件)。医師・看護師は令和元年基発0701第8号の考え方を確認する。
  • ・まずは自社の当直が「許可の内容と実態が一致しているか」をセルフチェックし、実作業の時間を客観的に記録できる状態を整えることが出発点になる。

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